この1年間に日本では原子力発電に関して3つの動きがあった。前進した点と後退した点の両方が起きている。
[前進した点]
- 2026年4月16日、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所の6号機(1356MW=メガワット=1000キロワット)が営業運転を再開した。直前に技術的な問題が発生したが、数カ月かけて運転にこぎつけた。
- 2025年7月30日、原子力規制委員会は北海道電力の泊発電所3号機(912MW)の再稼働を認可した。早ければ2027年内に再稼働できる。この原子炉は運転開始から16年を経過していて、日本では最も新しい。
[後退した点]
- 2026年1月14日、原子力規制委員会は中部電力の浜岡原子力発電所3・4号機(1100MW、1137MW)に対して、安全対策に関する新規制基準の適合性審査を中止した。中部電力の提出資料の中に、基準地震動(地震の発生時に想定する最大の揺れ)のデータを意図的に操作する不正行為を確認したためだ。
33基の原子炉のうち再稼働は15基にとどまる
柏崎刈羽6号機が再稼働した2026年4月16日の時点で、合計33基(33.1GW=ギガワット=100万キロワット)の原子炉のうち、15基が再稼働した。33基の原子炉は運転開始から平均で35年を経過している。このほかに3基(4.1GW)が建設中で、そのうち2基が運転を申請済みだ(図1)。
図1:日本の原子炉の現状(2026年4月16日時点)
東京電力ホールディングスのプレスリリースを(2026年4月16日)もとに自然エネルギー財団が作成
日本の原子炉の最新の状況をもとに、4種類のシナリオ(低位、中位、高位、最大)を想定して、2040年度までに運転する可能性がある原子力発電の設備容量を予測してみた(図2)。
ここで重要な注意点がある。原子炉の運転年数に関しては、国際原子力機関(IAEA)の基準がある。低位と中位のシナリオでは、国際的な慣習に合わせてIAEAの算定方法を採用した。原子炉が長期に運転を停止した場合には、その期間も運転年数に含めることになっている。IAEAの見解では、運転を停止する期間があっても、原子炉の老朽化の影響はまぬがれない。しかし日本の算定方法は異なる。外部要因(地震など)によって長期の運転停止が生じた場合には、運転年数に含めない。世界でも他に例を見ない議論を呼ぶ考え方である。高位と最大のシナリオでは、このような日本独自の算定方法を採用した。
参考までに、2041年度から2050年度までの予測も示した。シナリオによって運転期間の延長に違いはあるものの、2050年度に向けて運転を停止する原子炉が増えていくことを想定している。
図2:原子力発電(運転状態)の設備容量の予測(2026~2050年度)
出典:自然エネルギー財団
現時点で運転開始日が明確に決まっていない原子炉については、以下の想定をもとに運転開始年度を予測した。
- 建設中で運転を申請済みの原子炉:事業者の中国電力とJパワーによれば、島根原子力発電所3号機(1373MW)は2030年度に、大間原子力発電所(1338MW)は2031年度に、それぞれ準備が進んで運転を開始できる見込みだ。高位と最大のシナリオでは、この予定どおりに運転開始年度を想定した。
- 再稼働を申請済みの原子炉:調査会社のBloombergNEFが新規制基準の審査状況を確認したところ、いずれの原子炉も2035年度までに運転を開始できる見通しである。高位と最大のシナリオでは、2035年度までに再稼働できることを想定した。
- 再稼働を申請していない原子炉:新規制基準の審査に要する期間は平均でほぼ14年と推定できる。すでに再稼働した原子炉のほか、再稼働を認可済みの原子炉では事業者の予定をもとに、再稼働を申請済みの原子炉ではBloombergNEFによる予測をもとに、合わせて推定した平均値である。最大のシナリオに限り、楽観的な予測として、対象の原子炉がすべて2026年度内に申請して2040年度に再稼働できることを想定した。
表1:原子力発電の設備容量を予測する4つのシナリオ
日本政府による国全体の発電電力量の予測は2030年度に934TWh(テラワット時=10億キロワット時)、2040年度に1100~1200TWhである。それをもとに原子力発電の比率を予測した(図3)。
図3:原子力発電の比率の予測と国の目標(2030年度、2040年度)
出典:自然エネルギー財団
2040年度の政府の目標を達成できるのは、「最大」のシナリオを実現できた場合に限られる。再稼働する可能性が低い原子炉(未申請の原子炉のほか、問題が生じている浜岡2・3号機、志賀2号機、敦賀2号機を含む)がすべて2035年度までに運転を開始し、さらに工事を中止している東京電力ホールディングスの東通1号機(1385MW)が2040年までに運転を開始する必要がある。合計で35基の原子炉が運転している状況だ(柏崎刈羽1~5号機のうち1基を除く)。
それに加えて、すべての原子炉が60年を超えて運転する必要がある。設備利用率(設備容量に対する年間の発電電力量の割合)も85%という非常に高い比率を想定している。2020年から2024年までの設備利用率の実績は73.7%だった。
そのほかの3種類のシナリオでは、政府の目標を達成することはできない。「高位」のシナリオでは、23基の原子炉が運転して、20年間の期間延長を想定しているが、それでも大きく足りない。より現実的な「中位」や「低位」のシナリオでは、新設の原子炉を想定しない。20年間の期間延長もなく、設備利用率も実績に近い水準(70%、75%)で設定した。
中位と低位のシナリオにおいては、長期の運転停止期間を含めて最長60年間の運転年数を厳格に算定する。現時点で60年以上の運転を続けている原子炉は世界全体で存在しない。世界で最も長く運転している原子炉は、スイスのBeznau1号機(380MW)の56年である。
以上で明らかなことは、自然エネルギーの電力の比率(2024年度に23.1%)を政府の目標(2030年度に36~38%、2040年度に40~50%)よりも上回る水準に拡大しなければ、脱炭素の電力が大幅に不足してしまう可能性が大きい。
日本では自然エネルギーも課題に直面している。太陽光以外の発電コスト、社会の受容性、電力システムへの統合などだ。しかしながら自然エネルギーのポテンシャルは膨大に残っていて、化石燃料の輸入に依存している現状を解消するうえで原子力よりも有利である。
全世界で石油の31%、ガスの18%を中東の各国が供給している。その中東で紛争が起きている。一方で気候変動の影響がますます深刻になってきた。電力の脱炭素化は急を要する。
[補足]
日本の原子炉は個々に状況が異なり、今後の動向を予測することはむずかしい。以下の想定をもとに、4種類のシナリオで運転状況を予測した。
4種類のシナリオによる運転状況の想定
(2) 志賀2号機は2024年1月1日に発生した能登半島地震を受けて詳細な検査を実施中。
(3) 敦賀2号機は2024年11月13日に原子力規制委員会の審査で不合格。
(4) 柏崎刈羽1~5号機のうち少なくとも1基は同6・7号機の再稼働に伴って廃止する方針。




