もう一つのエネルギー基本計画2030年再エネ82%を織込む豪州ロードマップ

山家 公雄 エネルギー政策研究所長

2024年11月7日

 豪州の労働党政権は、2022年5月の政権交代以降、2030年再エネ電力比率82%にコミットするなど、積極的な脱炭素対策を打ち出し着実に実施してきている。電力需給に係る2050年を目標とするロードマップ(ISP:Integrated System Plan)が2年毎に改訂されるのであるが、6月26日に2024年版(2024ISP)が公表された。これは日本のエネルギー基本計画に相当する。本稿では、2024ISPを解説するとともに豪州の政策を改めて評価する。

1.豪州労働党政権の環境・エネルギー政策

(1-1)環境を重視する労働党に政権交代

 2022年5月に、豪州は、保守連合から労働党のアルバニージー政権への交代が行われた。大きな違いの一つに環境・エネルギー政策がある。保守連合は、石炭火力を主軸に据え、脱炭素に関しては慎重であった。労働党政権は、  再エネとストレージ(蓄電設備)を主とする積極的な脱炭素政策を推進する。ぎりぎり過半数をとる中で、100%自然エネルギーを目指し党勢を拡大している緑の党の主張も影響している。象徴は2030年までに再エネ電力比率82%を目標に掲げていることである。先進国ではドイツの2030年再エネ80%コミットがあるが、それを上回る。政権交代当時、豪州の電力シェアは火力発電が7割で石炭は5割であった。現在東部のニュー・サウスウェールズ州(NSW:New South Wales)、クィーンズランド州(QLD:Queensland)、ビクトリア州(VIC:Victoria)は石炭が6割程度を占め、短期間での脱炭素は相当の覚悟と大胆な施策が必要となる。

(1-2)長期エネルギーロードマップISPが政策判断の基礎

 目標の実現可能性の検証が必要であるが、これを担うのがオーストラリア・エネルギー市場管理機関(AEMO:Australia Energy Market Operator)で、2050年度までのロードマップである統合システム計画(ISP:Integrated System Plan)を作成する。ISPは国家電力規則により2年毎の作成が義務付けられている。ISPは、国内電力消費量の約8割を占める全国電力市場(NEM:National Electricity Market)を範疇としている。豪州では、電力取引市場が地域ごとに分かれているが、NEMは東南部の5州と準州で構成される。QLD州、NSW州、VIC州、南オーストラリア州(SA:South Australia)、タスマニア州(TAS:Tasmania)、首都特別地域(ACT:Australian Capital Territory)である。

 AEMOは豪州全体の卸電力市場の運営者(オペレーター)であり、また州間の送電連系線を管理・運用する役割を担う。日本でいうと日本卸電力取引所(JEPX)と電力広域的運営推進機関(OCCTO)の機能を併せ持つ、最も重要な機関であり、安定供給(供給の信頼性)に責任を持つ中立的な機関である。公正で効率的な電力取引、信頼性維持に責任をもち、最も情報が集中する。あらゆるステークホルダーの意見を集約し、脱炭素を低コストで実現する道筋を探るシミュレーションは、最も信頼されている。

(1-3)2024年ISPのポイント

 直近のISPは、2024年6月26日に公表された。ドラフトは2023年12月に公開され、その後2000を超える関係者のコメントを参考に最終版が取りまとめられた。2022年6月版と骨格は変わらないが、石炭火力全廃時期がより早まる一方で、屋根置き太陽光を主に分散型設備による供給量が増えることに特徴がある。以下は、2024年ISPの中心となるステップチェンジ・シナリオ(Step-Change-Scenario)のポイントである。

資料1 2024ISPのスッテプチェンジ・シナリオのポイント

(出所)2024ISPより作成

2.2024年版ISPの解説

(2-1)豪州電力市場の特長

 まず、豪州の電力市場の特徴を州毎に解説する。図1は、2022-2023年(2022/4~2023/3)の発電電力量を全国および州毎に示したものである。やや古いデータであるが、これは自家消費を含む全体の数字である。豪州は屋根置き太陽光(RTS:Roof Top Solar)が普及しているが、RTSは自家消費が主となる。全国では火力が65%(石炭46%、ガス17%)で、再エネは35%(太陽光16%、風力12%)である。なお、2023暦年のNAMでの再エネ比率は4割である。

図1 オーストラリアの電力情勢(2022-23年)

(出所)豪州エネルギー統計 “Table O Electricity generation by fuel type 2022-23 and 2023”

 州ごとに見ると、ガスは西オーストラリア州(WA:Western Australia)と北部準州(NT:Northern Territory)に集中している。石炭は産地である東部のNSW州とQLD州、VIC州で約6割と多い。SA州は、風力・太陽光が74%と多く、ガスが26%である。なお、同州の再エネ電力比率は最近年平均で75%を記録しており、一定規模以上の系統では世界最高を誇っている。TAS州は、水力で8割、再エネ全体では98%を占める。
豪州の2030年再エネ82%目標は火力発電の多い州、特に石炭火力6割を占めるNSW州とQLD州には高いハードルとなる(VIC州は褐炭が主)。各州は、政権に拘わらず脱炭素に熱心であり、特徴のある政策を打ち出している。以下で、2024年ISPを解説し、豪州の政策に接近する。

(2-2)中心シナリオは排出削減を実現するステップチェンジ・シナリオ

 ISPシナリオは、2050年脱炭素を前提に、石炭火力を再エネとストレージで代替するものと総括できる。需要や石炭フェーズアウトを予想し、送電網等のインフラや再エネ促進区域(REZs:Renewable Energy Zones)を整備し、シミュレーションで安定供給や経済性を確認する作業を行い、最低コストの途(Optimal-Development-Path)を検証する。各州政府の目標との整合性や送配電事業者や主な発電事業者等とも連携して、確認作業を行う。現政権の看板である2030年再エネ電力比率82%の実現可能性も確認する。
ISPでは、3つのシナリオを検証する。脱炭素に向けた積極性の度合いに応じてプログレッシブチェンジ(Progressive-Change)、ステップチェンジ(Step-Change)、グリーンエナジー輸出(Green-Energy-Export)である。プログレッシブは経済成長やエネルギー投資の伸びが鈍化し脱炭素化が遅れるケースである。ステップチェンジは経済成長を達成しながら2050年のネットゼロを実現するケースであり、これが政策目標となるセンターシナリオとなる。グリーンエナジー輸出は、産業分野の脱炭素化がより早いペースで進展し、水素など低排出エネルギーの輸出が実現するケースであり、再エネやストレージそしてインフラ整備の所要量が格段に大きくなる。

(2-3)発電容量の見通し: 屋根置き太陽光を主に再エネとストレージで牽引

 図2は、ステップチェンジにおける発電容量の見通しである。発電容量は、総量は2022年度時点の約80GWから2030年度で160GW、2049年度で290GWへと大きく増える。なお、グリーンエナジー輸出ケースでは、2049年度で585GWと2倍の水準となる。ちなみに2022年版では、グリーンエナジー輸出ケースに相当するのは水素大国ケースであったが、総量は740GWであった。大規模再エネ開発をより現実的に見直したと言える。
太陽光は、屋根置き太陽光(RTS)と系統接続大型設備との合計で急速に増加し最大シェアを占める。RTSは、蓄電池により制御される部分はCER-Storageに分類されているが、この伸びも著しい。CERとはConsumer Energy Resourcesであり、分散型資源(DER:Distributed Energy Resources)とほぼ同義である。太陽光に次ぐのは陸上・洋上の風力発電である。ストレージ(蓄電設備)も系統接続、分散型の双方で大きく増加する。

図2 豪州の電力導入量推移(GW) ISP2024

(出所)AEMO “Integrated System Plan 2024 (2024/6)”

 石炭・ガスの火力発電は急速に減少し、石炭は2038年までにゼロとなる。ガスは、柔軟性を提供する設備(Flexible-Gas)は水素混焼等で次第に増えるが、通常の設備(Mid-Merit-Gas)は2050年度までにゼロとなる。  なお、電源は大きく、Dispatchable(出力調整可能)とそれ以外の2つに分類されているが、火力や水力・バイオマスそして系統接続ストレージや制御されたCER・ストレージ(Coordinated-CER-Storage)はDispatchableに分類される。火力はベースロード、ミドルロードという表現が用いられていない。そのような分類には意味がないと認識されている。Dispatchableでない電源は太陽光、風力のことであり、ここが大きく増えストレージとともに主役となる。
再エネに焦点を当てると、最も増えるのがRTSであり、陸上風力、大規模太陽光、洋上風力が続く。分散型の再エネで自家消費される部分(Passive-CER-Storage)も存在感を持つ。

(2-4)石炭フェーズアウトの見通し: 5年前倒しの2038年に全廃

 図3は、石炭火力フェーズアウトの見通しである。点線の折れ線グラフは、発電事業者により公表された廃止見通しである。2年前(2022 ISP)と現時点(2024 ISP)を示しているが、前倒しとなっている。事業者は廃止予定の3年前までには公表することが義務付けられており、経過に伴い廃止量は増える傾向にある。実線の折れ線グラフはISPの3シナリオである。ステップチェンジ・シナリオでは2038年までに全廃となる。棒グラフはステップチェンジの東部4州における容量の推移を示している。SA州は2014年度に廃止済で、褐炭が主のVIC州は2033年度中に全廃となる。6割を占めるNSW州とQLD州は、NSW州の廃止が先行するが、全廃はQLD州が早まる(2034年まで)。当面の最大の廃止案件は在NSW州で最大規模290万kWのエラリング発電所で2025年8月に予定されている(水色で2025-26に大きく減少)。なお、同発電所の廃止はその後2年間延期となった。

図3 石炭火力フェーズアウトの現状とシナリオ(ISP2024)

(出所)AEMO “Integrated System Plan 2024 (2024/6)”

(2-5)再エネ促進地域(REZs)の概要:41ヶ所を整備

 図4は、AEMOが2022年に指定した2049-50年までの再エネ促進地域(REZs)  を示している。太陽光・風力発電の適地、需要地からの距離、送電線の整備計画、地域の受入れ度合い等を勘案して、州政府と緊密に連携して設定する。陸地で35ヶ所、洋上風力で6ヶ所の計41ヶ所を指定している。主要設備の立地見通しが把握でき、開発事業者や地域に予見性を与え、円滑な整備が期待できることとなる。北部は太陽光が、南部は風力が比較的多くなる。また、効率的な送電線等インフラ形成にも寄与する。

図4 豪州REZの最適配置(ISP2022)

(出所)AEMO “Integrated System Plan (2022/6)"に加工・追記

(2-6)大規模電源・ストレージおよび送電網の整備

 図5は風力・太陽光を含む大規模電源、ストレージ設備の配置とそれを繋ぐ連系線・基幹送電線のルートを示している。図4のREZsでは太陽光・風力の立地状況を示しているが、当図ではBESS、揚水、ガス火力の配置が追加されている。長期間で大規模な蓄電が可能な揚水への期待は大きい。ガス火力は水素を燃料とする調整用となるが、大都市で現在石炭火力が多く立地しているニューキャッスル市、メルボルン市近郊に位置する。

図5 豪州のインフラ、設備の最適配置(ISP2024)

(出所)AEMO “ Integrated System Plan 2024 (2024/6)”に加工・追記

(2-6-1)10000キロメートルのインフラ新設で218億ドルの超過便益発生 

 豪州の東部送電網は、面積は広大だが、石炭産業を主に需要地は限定されており電力は石炭火力で賄われてきた。州間をつなぐ連系線の整備は遅れていたが、供給力を再エネとストレージに転換するなかで、連系線の整備が重要課題となっており、国策として整備を急いでいる。コストや時間を節約する観点でストレージをどこにどのタイミングで導入するかも最重要課題となる。

 ステップチェンジでは向こう10年間で5000kmの新設が必要となるが、既に1/2は着工済みである。また、2050年までに10000kmの新設が必要としている。総投資額は160億ドル(豪ドル)を要するが、全額を回収したうえで、185億ドルのコスト削減効果があり、加えて33億ドルの削減効果があると試算する。

(2-6-2)再エネ資源の豊富な南部から需要地・産炭地の中北部への送電網を整備 

 再エネ・ストレージ設備導入のカギを握る送電網の整備について、建設中(Committed & Anticipated)、認可済み・準備中(Actionable)、将来必要事業(Future ISP)に分類される。NSW州、VIC州、SA州、TAS州を繋ぐ州間連系線の整備がポイントで、南部の再エネ資源をシドニー市、ニューキャッスル市等の石炭火力が廃止される人口密集地に送付する意図が見える。水力・風力資源に恵まれるTAS州は2040年再エネ200%にコミットしている。VIC州は最大の洋上風力適地を擁する。当図では省略されているが、北部に位置するQLD州・NSW州間の連系線も認可済み事業であり、QLD州の石炭火力廃止にも備える。

 個別にみると、まずSA州とNSW州を結ぶEnergy-Connect事業が2026年運開を目指して建設中である。SA州は再エネ発電比率が年間平均で75%を占め、再エネ100%超を目指している。当事業が完成する2026年には100%超となり、NSW州へ再エネ電力を移出することが可能となる。

 TAS州、VIC州を経てNSW州に至る連系線としては南からMarinus-Link(TAS-VIC)、VNI-WEST(VIC-NSW)が整備されるが、NSW州内では南部・西部からシドニーに向かうHume-Linkが整備される。最大都市シドニーと産業都市ニューキャッスル周辺は、大規模石炭火力の廃止もあり、Sydney-Ring等の送電網が整備される。建設中事業にもどると、前述のEnergy-Connectに加えて、大都市メルボルンとVNI-WestとつなぐWestern-Renewables-Link、シドニー・ニューキャッスルへの再エネ供給基地となるCentral-West-Orana-REZの送電網が州内基幹送電線として建設中である。

3.2024年版ISPが描く2050年の姿と日本への示唆

(3-1)スッテプチェンジ・シナリオが描く2050年の姿

 図6は、ステップチェンジ・シナリオが描く2050年時点の目標・姿を示したものである。系統からの電力消費は、現在の174TWhから2050年の313TWhへと倍増する。実際の電力需要は2.5倍に増えるのであるが、省エネ進展に加えて、屋根置き太陽光が4倍に増え関連の蓄電池も普及し自家消費が大きく増えることから、2倍増に留まる。石炭火力は2030年に46%減、2038年には100%減となるが、前回(2022年ISP)の2043年100%に比べて5年前倒しで全廃となる。

図6 豪州脱炭素シナリオ(ISP-Step) 主要指標2024

(出所)AEMO “ Integrated System Plan 2024 (2024/6) ” を加工

 需要増、石炭火力前倒しフェーズアウトを賄うのが、再エネとストレージである。系統接続太陽光・風力は現在の21GWから2050年127GWへと6倍増と供給力増の主役となる。屋根置き等の分散型太陽光は現在の21GWから2050年86GWhへと4倍増となる。2年前は69GWであり、さらに増えると予想する。系統再エネは前回の141GWより減少するがそれを分散再エネでカバーするとの予想である。
ストレージは現在の3GWから2050年には16倍増の49GWとなるが、7割弱は分散型である。ドラフトでは出力50GW・蓄電容量654GWhで分散型は34GWとなっていた。ガス火力は、ゼロカーボン調整用として現在の11.5GWから15GWへ増えるが、利用率は低く留まるとしている。
要約すると、AIや人口増等による成長を背景とする電力需要著増、石炭火力前倒し全廃等による所要供給量増は、再エネとストレージで賄うが、2年前と比べると屋根置き太陽光と関連のバッテリーが大きく増えることとなる。

(3-2)日本への示唆

 豪州のエネルギー政策は、多くの点で大変参考になる。以下、列挙する。

  1. ①  詳細なロードマップ策定

システムに責任を持つ機関AEMOが時間的、地理的、技術的に整合性のとれた詳細な羅針盤(ロードマップ)を策定し、支援措置と相まって投資に予見性を付与している。

  1. ②  産炭国でありながら早期の石炭火力フェーズアウトを実施

ISPの舞台である東岸地域は全国電力消費量の8割を占めるが、産炭地域であり脱炭素への途は容易ではない。労働党政権が発足した2022年5月当時は、石炭火力発電は7割を占めていたが、現状でも6割のシェアを有する。原子力発電利用が法的に禁止され、ガス火力が少量に留まる中で、調整力を含め石炭火力の果たす役割は大きい。2038年までに廃止することは、地元の雇用維持を含め、しっかりとした戦略と決意を要する。豊富な再エネ資源を送電網と蓄電設備を活用し、水素産業を含め雇用にも結び付ける戦略である。日本はエネルギー資源の殆どを海外に依存すると強調されるが、脱炭素は国内雇用への影響は小さいことを意味する。再エネ資源も豊富に賦存し、この国産資源を活用すべきである。

  1. ③  脆弱な系統を積極的に増強

豪州東岸地域は、炭鉱や石炭積み出し港の周辺に人口が集積し近隣に石炭火力が立地してきた。分散資源の再エネで代替する場合、州間連系線や基幹送電線は脆弱である。短期間で積極的に整備を実施するが、消費者リソースを含む蓄電設備で補完する。膨大な費用がかかるが、価格低下や産業・雇用そして排出削減効果等で費用以上の便益が享受できるとする。

  1. ④  再エネの主役は消費者設置太陽光

豪州は再エネでは太陽光の導入が最も進んでいる。2022/4~2023/3のNEMにおける発電電力量をみると、再エネ全体で37%だが太陽光は16%、風力は13%である。「太陽光普及は広大な土地のおかげ」と思われがちだが、大規模が6%に対して小規模は10%と屋根置きがメインである。ISPでは、分散型太陽光の容量は現在の21GWから2050年は86GWに増える見通しであり、自家消費と蓄電池で制御される調整力が大きな役割を果たす。建物等屋根置きにポテンシャルがあり期待できるという点では日本も同様である。

  1. ⑤  統合コストは再エネが最も低い

再エネとストレージの組み合わせは、コスト的にもメリットがある。豪州を代表する公的研究機関である豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO:Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization)は、5月に電源種別のLCOE(均等化発電原価)の試算結果を公表したが、現在でも系統・ストレージ費用を加えた再エネ費用が最も低いとしている。

最後に: 遅れてきた先進国豪州は世界の見本に

 本稿は、豪州のエネルギー市場・システム運営機関であるAEMOが2年振りに改訂した電力供給計画といえるISPを解説するとともに、現行の労働党政権の積極的な環境・エネルギー政策を総括したものである。産炭地でありながら、2030年再エネ電力82%にコミットする豪州は「遅れてきた先進国」ではあるが、その短期間で目標実現を進める手法は、世界の注目を集めている。時間的・場所的・技術的に詳細なロードマップの策定はその核心である。2年間の変化は、屋根置き太陽光やEVバッテリーを含む分散型システムが大きく増えることである。これは系統制約等に悩む世界に先行する姿であろう。

 また、連邦・州政府による再エネ・ストレージ等の促進対策も非常に興味深い。2024年度より導入される「EUの電力市場改革」は、豪州の公的金融制度として先行したCIS(Capacity Investment Scheme、二重価格CfD)とほぼ同一である。CISは実は州政府の制度を参考にしている。これらについては機会を見て解説したい。

  • ■著者プロフィール
    山家 公雄(やまか・きみお)

    エネルギー政策研究所長 /  豊田合成(株)アドバイザー

    1980年東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、鉄鋼業界などの担当を経て、環境・エネルギー部次長、調査部審議役などを歴任。金融や産業調査の経験を生かし、国際的視野から環境・エネルギー政策をウオッチしてきた。 /2009年エネルギー戦略研究所長、2012年山形県エネルギ-顧問、2014年京大特任教授、2016年豊田合成(株)取締役に就任。再エネ・電力システムを主に研究。 /2023年10月より現職。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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