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電力の需給ひっ迫は複数の手段で対応、原子力は解決策にならない

石田 雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2022年7月6日

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 6月27日(月)から30日(木)までの4日間、東京エリアの電力の需給状況がひっ迫。政府は注意報を出して節電を呼びかける一方、東京電力パワーグリッド(東電PG)は揚水発電や他エリアからの電力融通を実施して供給力を確保した。需要が増大する日中には、太陽光発電が電力需要の20%以上をカバーして供給力の不足を補った。この間の使用率(供給力に対する需要の比率)は最高で96%にとどまり、停電の危険が生じる水準の97%を下回った。

 揚水発電や電力融通など複数の手段を組み合わせることによって、需給ひっ迫を回避できた。需要に合わせて供給力を調整できる電力システムの柔軟性が重要であることが改めて明らかになった。一方で供給力を拡大するために原子力発電の再稼働を求める声が上がっているが、原子力発電は柔軟に出力を調整できない問題のほか、老朽化が進む発電設備の安定稼働に不安があり、有効な解決策にはならない。蓄電池の導入など、電力システムの柔軟性を高めるための確実な対策を早急に進めることが最善策である。

使用率のピークは朝に、日中は太陽光、夕方は揚水発電でカバー

 東電PGが公開している電力の需給データによると、ひっ迫が予想された4日間では、夕方の16時~17時に使用率のピークが来ることを予想していた(表1)。6月29日(水)には使用率が100%に達する可能性があった。しかし実際に使用率がピークになったのは、朝の9時~10時あるいは8時~9時である。

表1.東京エリアの使用率ピークの時間帯の予想と実績(2022年6月27日~7月1日)

出典:東京電力パワーグリッドのでんき予報のデータと気象庁の気象データをもとに作成

 太陽光発電の導入が進んでいる地域では、晴天の日に昼間の供給力が大幅に増える一方で、夏や冬には冷暖房などにより朝と夕方の電力需要も多い。このため太陽光発電の供給力が小さい朝と夕方の需給が厳しくなる場合がある。特に夕方は需要が多い状態のまま太陽光発電の供給力が減少することから、最も注意すべき時間帯である。東電PGが夕方の16時から17時に使用率がピークになることを予想したのも、このような理由によるものだ。

 夕方の使用率が100%に達する予想になった6月29日(水)の時間帯ごとの需給状況を見ると、東電PGが使用率のピークを緩和するために実施した対策が明確にわかる(表2)。需要が少ない深夜から朝にかけて、余剰電力を使って揚水発電の貯水量を増やし、夕方を中心に午後の時間帯に発電して供給力を増大させている。さらに他のエリアから連系線を通じて電力融通も夕方に増やして、16時~17時の使用率を90%に抑えることができた。政府が注意報で夕方の節電を広く呼びかけたことや、企業がデマンドレスポンスで需要の削減に応じたことも、需給ひっ迫状況の緩和に大きな効果があったと考えられる。

表2.東京エリアの6月29日(水)の時間帯別の電力需給状況

出典:東京電力パワーグリッドのでんき予報のデータをもとに作成

 注目すべきは、太陽光発電も供給力に大きく貢献している点だ。実際に使用率がピークに達した9時~10時には需要の24%、夕方の16時~17時でも9%で、水力発電の供給力をはるかに超えた。このほかに家庭や工場などで自家発電・自家消費している太陽光発電の電力が相当量あり、需要の減少に役立っている。今後さらに太陽光発電を拡大すれば、需給ひっ迫時の有効な対策になる。今回の東京エリアの需給ひっ迫の原因を太陽光発電にあるとする意見が一部に聞かれるが、その見方は正しくない。太陽光発電は主要な供給力の役割を果たしている。

老朽化した火力・原子力発電所に依存する問題

 むしろ根本的な問題は、火力発電所の老朽化により、需給状況に応じた運転計画に支障が生じたことである。6月下旬の需給ひっ迫時に、長期に運転を停止していたJERA(東京電力と中部電力の火力発電事業会社)の姉崎火力発電所5号機(LNG火力、出力60万kW、運転開始1977年4月)を急遽6月29日に運転再開する予定だった。ところが運転開始から40年以上を経過した発電設備のため、複数の不具合の補修作業に時間がかかり、翌日6月30日の午前10時45分になって運転を再開した。このような運転開始から40年以上を経過した大規模な火力発電設備は日本国内に数多くある。

 同様の問題は原子力発電所でも発生している。関西電力の高浜3号機(出力87万kW、運転開始1985年1月)では、3月1日に開始した定期検査中に蒸気発生器の伝熱管に破損が見つかり、現在も運転再開の見通しが立っていない。破損の原因の1つとして、運転開始から長期に運転を続けている問題が挙げられている。国内の原子力発電所の運転年数は平均で30年を超えており、同様の破損が発生する可能性は今後ますます高まる。原子力発電に依存するフランスでも2022年に入って設備の老朽化に伴うトラブルが相次ぎ、供給力の大幅な低下に見舞われている。古い設備や技術に依存することは安定稼働の面で不安が大きい。

 欧州の先進国では、太陽光と風力を中心に多数の自然エネルギーの発電設備を分散して導入することにより、特定の発電設備のトラブルの影響を小さく抑えるとともに、自家消費の拡大と余剰電力の融通を通じて需給の安定化を図っている。それに加えて蓄電池の導入、デマンドレスポンスの拡大、国際連系線を活用した電力の輸出入などの手段を組み合わせて、電力システムの柔軟性を高める対策を推進中だ。

 日本は欧州の先進国と比べても格段に大きな容量の揚水発電がある。地域間の連系線は欧州の国際連系線と同様の効果を発揮する。今後さらに地域間連系線の増強を急ぎ、自然エネルギーの導入拡大と合わせて蓄電池やデマンドレスポンスを活用することが、需給ひっ迫の問題を根本的に解決する重要な対策になる。それに加えてエネルギーの効率化や建築物の省エネ対策を全国各地で進めて、電力需要を抑制することが求められる。

<関連資料>
エネルギー安全保障の現実:自然エネルギーが危機を克服する(2022年7月)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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