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中国が2030年のCO2排出ピークアウトに向けて行動方針を発表

王嘉陽 自然エネルギー財団 上級研究員

2021年12月7日


 10月末から11月にかけて英国で開催されたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)で、中国の解振華気候変動特使は、カーボンニュートラルの実現に向けて新たな政策的な取り組みを実施していると表明した。その直前の10月24日に、中国の国務院(日本の内閣に相当)は「2030年のCO2排出ピークアウトへの行動方針に関する通知」(以下:行動方針)を発表している。この行動方針に基づいて、電力部門と産業部門の低炭素化により、2025年から石炭の消費を減少させる計画だ。さらに交通部門においては、電動化および水素により石油を代替し、石油消費を2030年にピークアウトする目標を設定した。建築部門では省エネ基準の強化や森林率の向上などの対策を講じる。各分野で自然エネルギーの利用を拡大してエネルギー需要の増加を満たし、経済発展と排出削減の両立を目指す。

発電電力量に占める自然エネルギーの比率を2030年に40%以上へ

 新たな行動方針では、5年ごと(2021~2025年と2026~2030年)に行動目標を設定した(表1)。
 
表1 五か年計画期間中の行動目標
出典:自然エネルギー財団作成


 まずエネルギーの消費について、非化石燃料の割合の目標値を更新した。図1に示すように、2020年の1次エネルギー消費量のうち、水力、風力、太陽光などの非化石燃料が占める割合は15.9%だった。この割合を2025年に20%、2030年に25%まで増やすことを目標に掲げた。

 
図1 中国の1次エネルギー消費量の構成比
注:非化石燃料に原子力を含む(ただし比率は不明)
出典:中国統計局の公表データに基づいて自然エネルギー財団作成

 目標実現に向けて、自然エネルギーの導入目標を明確にした。2030年までに、水力発電を80GW(ギガワット=100万キロワット)新設し、風力と太陽光発電の合計設備容量を1200GW以上に拡大する目標を定めた(図2)。この目標を達成すれば、2030年に中国の自然エネルギー発電設備容量は火力発電を上回り、発電電力量は消費量の40%以上を占めると予測している(中国国家能源局(2021b))。
 
図2 中国の発電設備容量
注:2030年の火力、原子力、バイオの設備容量の目標値は未発表のため、2020年と同じに設定
出典:自然エネルギー財団作成

 習近平国家主席は10月の国連生物多様性サミットで、内陸のゴビ砂漠地域での大規模な風力発電と太陽光発電の建設を加速させることを表明した。第1弾として合計100GWの発電設備を順次建設する。さらに行動指針では「太陽光+」というモデルを示した。分散型の太陽光発電によって、同時に農業や林業の発展を図る。大規模な洋上風力発電も計画的に発展させる。全国レベルの目標値は未発表だが、洋上風力発電の開発が盛んな複数の省が独自に設定した目標値を合計すると、2025年までに33GWにのぼる。大規模な陸上風力と太陽光の発電コストはすでに石炭火力発電と競争できるレベルに到達した。2030年には自然エネルギーの発電設備容量を合計すると1680GWに達して、火力の1215GWを大幅に上回る。石炭火力に代わって自然エネルギーが中国の主力電源になりつつある。

 自然エネルギーによる電力の大量導入に応じて、送電網の調整力と安定性を高めることが求められる。そのため行動方針では、蓄電設備の発展目標も設けた。2025年までに30GWの蓄電設備を導入する。さらに2030年に揚水発電の総設備容量を120GWまで拡大し、省レベルの送電網の予備率(ピーク需要に対する供給の余剰率)を5%以上確保することを目指す。

石炭消費量は2025年から減少へ、電力部門と産業部門を中心に

 中国では現在のところ石炭中心のエネルギー構造になっているため、石炭消費の抑制がCO2排出ピークアウトの目標達成を大きく左右する。第十三次五か年計画期間中(2016~2020年)に、石炭消費量の抑制目標は41億トンだった。実際に5年間の石炭消費量は目標以下に収まっている。行動指針では、2025年までに石炭消費量の増加を一層抑制し、2025年以降に減少に転じる方針を決めた。ただし数値目標は設定していない。
 
図3 中国の石炭消費量(億トン)
出典:中国統計局の公表データに基づいて自然エネルギー財団作成

 石炭消費の削減は主に電力部門と産業部門で実施する。電力部門においては、石炭火力発電の新設を厳しく制限した上で、エネルギー利用効率が低い発電設備の廃止を計画的に進める。電力部門のCO2排出ピークアウトの目標年度を全体よりも5年早い2025年に設定した。産業部門にも様々な排出削減対策を講じる。代表例は鉄鋼である。石炭を使わない電炉の利用拡大と水素製鉄などの技術開発により、電力部門と同様に2025年の排出ピークアウトを目指す。さらに2030年にはピーク時(2025年)の排出量から30%削減することを目標とする。

 中国国内のコロナ感染収束と経済回復により、2021年1~9月の石炭需要は大幅に増加し、予測を大きく超えた。その結果、需給逼迫の状況が発生して石炭価格が高騰した。ただし国務院は、需給逼迫は一時的な消費量の増加によるものであり、これを理由に石炭火力発電の増設や石炭消費制限目標の緩和を実施すべきではないと表明し、石炭消費抑制の重要性を強調した。9月から石炭の需給調整を進めて、国内のエネルギー多消費産業の電力使用制限などの需要削減対策を実施している。同時に、国内の石炭生産量を増やし、オーストラリアからの石炭輸入再開などにより輸入量を増加している。11月には需給逼迫の状況は改善し、石炭価格も低下傾向に転じた。

 石炭に続いて消費量が多いエネルギーは石油である。石油消費を削減するために行動指針では、2030年の時点で新規の運送設備のうち、電力、水素、天然ガス、バイオ燃料をエネルギー源とするクリーンエネルギー設備(自動車のほかに船、列車、飛行機などを含む)の導入目標比率を40%に設定した。さらに、陸運交通における石油消費量を2030年にピークアウトすることを努力目標として設定した。中国交通運送部は、2022年における公共交通機関のクリーンエネルギー車(上記のクリーンエネルギーを燃料とする自動車)の目標比率を50%以上に設定した。リゾート地として人気が高い海南省は独自に「クリーンエネルギー自動車発展計画」を発表して、2030年から省内におけるガソリン車の販売禁止を決定した。

 天然ガスはCO2排出量が相対的に低い化石燃料として、近年の消費量が増加している。2020年の天然ガス消費量は3280億㎥で、2015年の1348億㎥と比べて約70%増加した。用途別に見ると、工業用燃料と都市部における燃料の消費量がそれぞれ全体の37~38%を占める。発電用燃料は16%、化学工業用の原料が9%を占めている。国家能源局が発表した「中国天然ガス発展報告書2021」では、天然ガスによる石炭と石油の代替が熱利用や交通などの分野で重要であると指摘したうえで、2025年の消費量は4300~4500億㎥、2030年には5500~6000億㎥に増加すると予測した。

 建築部門について行動指針では、2025年から都市部の新築建築物はすべてクリーン建築基準(基準番号:GB/T 50378-2019、詳細は人民網(2021)参照)に適応させるほか、新築の公共施設と工場の屋上太陽光発電設置率の目標を50%(新規建設棟数に占める割合)に定めた。このほか森林率の目標も設定し、2030年に国土面積の森林率を25%(2019年の森林率は約23%)まで増加させて、森林によるカーボンシンク(CO2吸収)システムを確立する。

 以上のように、中国は石炭と石油の消費の抑制と削減を進めながら、自然エネルギーの利用拡大によってエネルギー需要の増加を賄うことを目指している。建築部門の省エネや、植林によるカーボンシンクなどを促進して、2030年のCO2排出ピークアウトを実現させる。2009年に中国政府はGDP(国内総生産)あたりのCO2排出量を2020年に40~45%削減(2005年比)する目標を発表したが、2020年の実績値は48.4%削減となり、目標を上回った。今回の行動方針では、この削減目標を2025年に58%、2030年に65%と設定している。
 
図4 中国の産業別のCO2排出推移
出典:Greenpeaceの公表データに基づいて自然エネルギー財団作成

 行動方針は中国のピークアウト実現のロードマップを描いたが、実現は容易ではない。中国の電力市場では従来の規制市場が存在し、電気料金の自由化などの課題が残っている。さらに自然エネルギーの電力が主力電源になると、電力システムを大規模集中型から分散型に変えていく必要がある。

 産業部門の低炭素化においては、生産設備の電化や、水素などによる代替技術の開発が不可欠だ。そのインセンティブと資金面の支援策が必要となる。交通部門においては、乗用車の電動化とともに、充電ネットワークやバッテリーのリサイクルシステムなどのインフラ整備を同時に進めなければならない。トラックなどの大型車両の脱炭素技術の開発は発展途上のため、将来の見通しは不明である。

 このように様々な課題があるものの、行動方針によって2030年の排出ピークアウトを実現するためのロードマップが明確になり、国を挙げて低炭素化を推進できる体制は整った。その先に目指す2060年のカーボンニュートラルに向けて、中国が大きく舵を切ったことは確かである。


<参考文献>
中国国務院(2021)、「2030年のCO2排出ピークアウトへの行動方針に関する通知」
中国国家能源局(2021a)、「中国天然ガス発展報告2021」、石油工業出版社
中国国家能源局(2021b)、「关于征求2021年可再生能源电力消纳责任权重和2022—2030年预期目标建议的函」
中国国家統計局、「National Data」
海南省人民政府(2019)、「海南省クリーンエネルギー自動車発展計画」
交通運送部(2019)、「グリーン外出行動方案」
人民網(2021)、「中国のグリーン建築が急発展 CO2排出量ピークアウトなどの実現へ」

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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