先進企業の自然エネルギー利用計画(第29回)パナソニックグループ、全世界の工場を2030年までにCO2実質ゼロへ太陽光と水素、蓄電池や風力も活用

石田 雅也 自然エネルギー財団 研究局長

2024年9月10日

【レポートの概要】

 全世界500社以上のグループ会社で構成するパナソニックグループでは、事業で排出するCO2(二酸化炭素)の大半を占める工場の排出削減に力を入れて取り組んでいる。世界各国に200カ所以上ある工場のCO2排出量を2030年までに実質ゼロに削減する計画を推進中だ(図1)。2024年3月末の時点でCO2ゼロ工場の数は44カ所(非製造拠点を含む)に拡大して、そのうち日本国内は13カ所になった。計画よりも早く進捗している。

図1.パナソニックグループのCO2ゼロ工場の拡大計画

BAU:Business As Usual(従来のまま事業を実行した場合)
PAS:パナソニック オートモーティブシステムズ、PID:パナソニック インダストリー、PEC:パナソニック エナジー
出典:パナソニックホールディングス

 CO2ゼロ工場を実現する施策は3段階で進める。第1に工場内のエネルギー消費量をメーターとゲージで計測しながら、AI(人工知能)による自律制御などを駆使して稼働率を向上させる。第2に工場の屋根などに太陽光発電設備を導入して、CO2を排出しない自然エネルギーの電力の使用量を増やす。第3に自然エネルギーの電力を外部から調達し、それでも不足する場合には証書やクレジットで環境価値(CO2を排出しないなどの価値)を購入する。

月間に4800万個の乾電池を生産する工場をCO2ゼロで運営

 国内のCO2ゼロ工場の代表的な例は、乾電池を生産するパナソニック エナジーの二色の浜工場に見ることができる(写真1)。月間に最大で4800万個の乾電池を生産する工場では、3棟の建屋の屋上に太陽光発電設備を導入した。発電規模は2MW(メガワット=1000キロワット)で、工場が年間に使用する電力の約15%を供給できる。

写真1.CO2ゼロで運営するパナソニック エナジーの二色の浜工場(大阪府貝塚市)

出典:パナソニックホールディングス

 3棟の屋上の太陽光発電設備はオンサイトPPA(電力購入契約)で導入した。発電事業者が設備の設置・運転・保守を担当して、発電した電力をパナソニック エナジーが購入して自家消費する。購入単価は従来の電気料金よりも安くて、年間に約1300万円のコスト削減を見込む。CO2排出量と電力購入コストの両方を長期に削減できる。

 さらにパナソニックグループ全体で太陽光発電や風力発電によるオフサイトPPAを締結して、その一部をパナソニック エナジーでも使用している。オンサイトPPAとオフサイトPPAのほか、不足分は自然エネルギー由来の証書を購入して、2023年度に年間でCO2ゼロを達成した。加えて水素を利用する純水素型燃料電池と水素タンクを2024年内に導入する計画で、自社で調達する自然エネルギーの電力を拡大していく。

純水素型燃料電池・太陽電池・蓄電池で自然エネルギー100%の工場へ

 パナソニックグループは純水素型燃料電池・太陽電池・蓄電池の3種類の電池を組み合わせて、工場の自然エネルギー100%化に向けた実証プロジェクトを進めている。燃料電池を生産するパナソニックの草津工場の敷地内に、実証施設を2022年に稼働させた(写真2)。燃料電池の製造部門が使用する電力を3種類の電池で供給する試みだ。

写真2.工場の自然エネルギー100%化に向けた実証施設「H2 KIBOU FIELD」(滋賀県草津市)

出典:パナソニックホールディングス

 日中に太陽光で発電した電力を自家消費しながら、余剰分を蓄電池に蓄えておく。太陽光で発電できない時間帯は純水素型燃料電池で電力を供給する一方、蓄電池で過不足を調整する仕組みである(図2)。独自に開発したエネルギーマネジメントシステムを使って、工場の電力需要や気象予報のデータをもとに、太陽光で発電した電力を最大限に活用する。現在は純水素型燃料電池で化石燃料由来のグレー水素を使用しているが、自然エネルギー由来のグリーン水素を調達できれば、1日24時間にわたって自然エネルギー100%の電力供給が可能になる(詳細レポートで解説)。

図2.純水素型燃料電池・太陽電池・蓄電池によるエネルギーマネジメントのイメージ

出典:パナソニックホールディングス

 

外部リンク

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