先進企業の自然エネルギー利用計画(第22回)スターバックス、環境配慮型のグリーンな店舗へ 地域に貢献する電力を選んで使う

石田 雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2022年1月5日

[詳細レポート]
先進企業の自然エネルギー利用計画(第22回)
スターバックス、環境配慮型のグリーンな店舗へ
地域に貢献する電力を選んで使う

 世界84カ国・地域に3万を超える店舗を展開するスターバックスは、全世界の店舗や事業拠点で使用する電力を自然エネルギー100%で調達する計画を推進している。2020年度の時点で自然エネルギーの比率は72%に達した。100%の目標達成に向けて、北米や欧州に続いて日本と中国でも自然エネルギーの電力を拡大中だ。日本においては、地域に貢献する電力を優先的に採用する方針である。地域貢献と環境負荷を基準に選定した自然エネルギー100%の電力を全国の約350店舗に導入した。

ソーラーシェアリングや未利用木材で発電した電力を採用

 地域に貢献する電力を採用した代表的な例が、千葉県のソーラーシェアリング(営農型の太陽光発電)である。もともと耕作放棄地だった農地の上部に太陽光パネルを設置して、パネルの下で農作物を栽培する(写真1左)。太陽光発電でCO2(二酸化炭素)を排出しない電力を供給することに加えて、農作物の光合成によってCO2を吸収する効果がある。気候変動の抑制とともに、地域の農業の再生につながる。この発電所が立地する千葉県の北東部にある4つの店舗でソーラーシェアリングの電力を利用している(写真1右)。

写真1.スターバックスの店舗に電力を供給するソーラーシェアリング発電所(左)、発電した電力を利用する店舗(右) 出典:スターバックス コーヒー ジャパン

 森林が豊富な四国の徳島県や高知県では、間伐で生じる端材などの未利用木材を活用したバイオマス発電所から電力を購入する。その一方で都市部の店舗では、生ごみの焼却処理に伴う排熱で発電した電力や、下水処理場で生まれるバイオガスを使って発電した電力を利用している。有害物質を出さない焼却設備を導入している自治体、あるいは下水の浄化性能を高める装置を導入して水質の改善に取り組んでいる自治体の電力を優先的に採用した。地域の環境負荷の低減につながる事業を支援するためである。

 スターバックスは従来から、地域環境をテーマにした活動を世界各国で推進している。活動の中で重視していることの1つが、地域との連携だ。日本国内の店舗で地域に貢献する電力を採用した理由である。「地域の雇用の創出や地域課題の解決につながる活動を実施している電力」を条件に、店舗が立地する地域の特性に合わせて自然エネルギー100%の電力を選定する。

2030年までに全世界でCO2・水・廃棄物を50%削減

 スターバックスは環境負荷の低減にいっそう力を入れるため、2020年1月に「Resource Positive」を新たな方針として打ち出した。地球の貴重な資源(リソース)を奪う量よりも還元する量を増やす(ポジティブ)ことを目指す。具体的には全世界で2030年までに、CO2排出量、水使用量、廃棄物をそれぞれ50%削減(2019年比)する計画である

 この目標に向けて、環境負荷の低い「Greener Store」(よりグリーンな店舗)」を世界各国で拡大中だ。自然エネルギーの電力を100%使用するとともに、最先端の技術を導入して水の使用量を削減し、売れ残った食品は地域のフードバンクに寄付する、といった活動を各店舗で実施する。すでに米国とカナダでは2300店舗以上をGreener Storeに転換して、CO2の排出量と水の使用量を30%以上削減する効果を上げている。日本を含む全世界で2025年までに合計1万店舗をGreener Storeで運営する予定である。

 日本で初めてのGreener Storeが2021年12月1日に東京駅の近くにオープンした(写真2)。皇居の外苑にある公園の中に建つ路面店だ。自然エネルギー100%の電力を採用したほか、日本のベンチャー企業が開発した自律分散型の水循環システムを導入するなど、Greener Storeの要件に沿って店舗を運営する。今後2022年10月以降に国内で開業する新しい店舗はGreener Storeとして設計・運営する方針である。

写真2.日本で初めてオープンしたGreener Storeの外観(左)、店内のデジタルサイネージ(右) 出典:スターバックス コーヒー ジャパン

 

外部リンク

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