
公益財団法人 自然エネルギー財団は本日、「洋上風力拡大の鍵となる港湾の未来に向けた提言」を公表しました。
本年6月、再エネ海域利用法が改正され、洋上風力の開発エリアが排他的経済水域(EEZ)へ拡大されました。8月に公表された「洋上風力産業ビジョン(第2次):浮体式洋上風力等に関する産業戦略」では、2040年に浮体式15GWの案件形成という目標が新たに掲げられました。
大規模な洋上風力の開発において基地港湾(再エネ発電設備等拠点港湾)はその基盤となるインフラです。国土交通大臣が基地港湾を指定し、発電事業者は最長30年間の貸し付けを受けることができます。2016年に基地港湾制度が創設され、2020年より運用が開始されましたが、洋上風力の導入に向けた実運用が進展する中で、さまざまな課題が顕在化しつつあります。また、浮体式を含めた将来の洋上風力プロジェクトに対応できるのかという問題も生じ始めています。
本報告書では、現状の基地港湾制度がかかえる課題の整理を行った上で、日本周辺海域の洋上風力ポテンシャルを、1) 着床式ポテンシャル(50m以浅)、2) 主にセミサブ型&パージ型浮体式ポテンシャル(50m以深150m以浅)、3) 主にスパー型&セミサブ型浮体式ポテンシャル(150m以深300m以浅)の3つの区分で整理し、それらの導入候補エリアを示しました。また、欧州ならびに日本で行われたセミサブ型およびスパー型の製造プロセスを概観し、浮体式洋上風力の建設プロセスにおいて基地港湾に求められる要件を整理しました。最後に、日本において洋上風力の拡大のために基地港湾制度のあり方について、4つの提言を行っています。
本報告書で示した一連の考察と提案が、日本の港湾の未来を拓き、洋上風力の拡大に資することを期待します。
<目次>
はじめに
第1章 2025年現在指定されている基地港湾の分析
1.1 指定されている基地港湾の分析
1.2 洋上風力発電事業者が基地港湾を利用する際の課題
第2章 気候目標達成に向けた洋上風力の導入量
2.1 気候目標を達成するために必要な洋上風力導入量
2.2 水深別洋上風力ポテンシャル
・主に着床式洋上風力の導入を想定する水深50m以浅のポテンシャル
・主にセミサブ型&パージ型浮体式洋上風力の導入を想定する水深50m以深150m以浅のポテンシャル
・主にスパー型&セミサブ型浮体式洋上風力の導入を想定する水深150m以深300m以浅のポテンシャル
2.3 洋上風力の種類別年間導入見込み量の検討
第3章 既存の浮体式洋上風力プロジェクトの分析
3.1 これまでに導入された浮体式洋上風力の製造プロセス
・ウィンドフロート・アトランティック(ポルトガル:セミサブ型)
・福島沖での浮体式洋上風力発電システム実証(日本:セミサブ型)
・ハイウィンドタンペン(ノルウェー:スパー型)
・五島市沖(日本:スパー型)
3.2 将来の基地港湾に必要な要件
提言:洋上風力拡大の鍵となる港湾の未来に向けて
・提言1:既存施設の有効活用と必要に応じた機能強化の実施
・提言2:港湾間連携を進める新たな仕組みの導入
・提言3:将来に向けたスパー型浮体式洋上風力の技術開発ロードマップ策定
・提言4:基地港湾の第三者借り上げと転貸制度の整備
参考資料:指定された基地港湾図および基地港湾指定の経緯の整理
・青森港
・能代港
・秋田港
・酒田港
・新潟港
・鹿島港
・北九州港
参考文献




