見解洋上風力発電開発に関する国会議員の逮捕について

2023年9月8日

in English

 自然エネルギー財団は、洋上風力発電開発に関する国会議員の逮捕に関し、以下の見解を公表しました。

 

 9月7日、洋上風力発電事業をめぐり秋本真利衆議院議員が受託収賄の容疑で逮捕された。本件の経緯、法的責任の如何に関しては今後の捜査や司法手続きにより明らかされることになる。しかし、与党自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務めていた人物が、風力発電会社の社長と馬主組合を作り多額の資金提供を受けていたという事態は、法的責任の有無にかかわらず、市民常識からも到底容認できるものではない。

 本件の発端の一つは、2021年12月に公表された洋上風力発電事業の入札で、大手商社の企業連合が三つの促進区域全てを落札し、贈賄側とされる企業も落札を逃したことにあると報道されている。

 この時の入札は洋上風力発電開発の国内初の本格的な競争入札であった。入札後、制度のあり方に関し、改善の必要性を指摘する様々な意見が出され、国は2022年11月に新たな「公募占用指針案」を公表し制度改正を行った。洋上風力発電は、日本における今後の自然エネルギー拡大の鍵を握るものであり、当財団は、洋上風力の着実な導入とコストダウンを進めるためには、透明で公正な競争環境が不可欠であるという基本的な認識から、提言の公表などを行ってきた。

 大手商社の企業連合が全ての区域を落札したのは、上限価格(29円/kWh)を大幅に下回る価格(11.99円~16.49円/kWh)で入札を行ったためである。産業界は従来から「2030年代までに8~9円/kWh」という洋上風力発電の発電コスト目標を掲げていた。当財団はこの入札により、発電コスト目標の実現に一気に近づいたことを高く評価し、入札の3か月後に開催したシンポジウム、REvision2022に、この企業連合を率いた企業の代表をパネリストに招き、いかにして低価格での入札が可能になったか、今後の洋上風力開発をどうあるべきか、などについての議論を行った。

 また、国の入札見直しの動きについては、公開途中の入札を停止して制度を見直すことは、市場の予見性を損ね投資意欲を著しく削ぐことを指摘してきた。さらに、新たな公募占用指針案については、評価が複雑になることを問題点として提起し、同一事業者の落札容量制限を導入したことに対して、「日本国内に大きな市場を形成してコストダウンを進める上でも、また世界の中の日本市場に投資を呼び込むためにも廃止すべきである」との提言を行ってきた。

 今回の事件により懸念されるのは、これからの洋上風力発電開発への影響である。日本の洋上風力開発は、欧州、米国、中国、韓国、台湾などと比べ大きく立ち遅れている。開発を加速するためには、これまで進められてきた着床式に加え、浮体式洋上風力発電の開発を本格的に推進していくことが求められる。国もこの7月から「洋上風力の産業競争力強化に向けた浮体式産業戦略検討会」を開催し、開発促進への取組みを開始していた。

 自然エネルギー財団は、今後とも真摯に洋上風力発電開発に取り組む国内外の多くの企業、国、自治体と共同し、透明で公正な競争環境の実現と風力発電の導入拡大に取り組んでいく。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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