自然エネルギーの導入を飛躍的に加速し、2035年温室効果ガス60%削減の実現をG7気候・エネルギー・環境大臣会合共同声明を踏まえて

2023年4月18日

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 4月16日に公表されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明は、「世界のGHG排出量を2019年比で2030年までに約43%、2035年までに約60%削減することの緊急性が高まっている」と明記し、IPCCが第6次評価統合報告書で世界に求めた削減対策の緊急強化の呼びかけに応える姿勢を示した。
 日本の現在の2030年削減目標、2013年比46%削減は2019年比では37%削減に留まる。現在の目標のままでは、2030年からの5年間で23ポイントもの削減を行わなければならないことになる。また60%削減は世界全体の必要削減レベルであるから、先進国の日本には、本来、もっと踏み込んだ削減が求められることを忘れてはならない。
 いま、日本政府に直ちに求められるのは、2035年までの60%以上の削減が可能となるよう、2030年までの削減を加速していくことである。

 今回の共同声明が温室効果ガス削減にむけたエネルギー転換の柱として強調しているのは、エネルギー効率化の徹底とともに、「自然エネルギー導入の速度と規模を大幅に引き上げる」ことである。共同声明は、2030年までに洋上風力発電を150GW、太陽光発電を1TW(1000GW)導入するという具体的なG7としての数値目標を掲げた。この目標水準自体は、二つの自然エネルギーのポテンシャルの活用を最大限に追求したものとは言えず、特に太陽光発電については、更なる引き上げが目指されるべきである。しかし、G7が太陽光発電と洋上風力発電の具体的な数値目標を掲げたのは今回が初めてであり、電力部門の脱炭素化を、自然エネルギーによって行う戦略を明確に示したものとして評価に値する。
 G7の全ての国の合意として自然エネルギー拡大の重要性が強調されたことは、原子力発電に関しては、利用を選択する国だけの限定的な合意事項に留まっていることと対照的である。

 昨年のG7で「2035年までに電力部門を完全にまたは大部分を脱炭素化する」という目標が決まったことについて、日本政府は「大部分(predominantly)」とは51%以上のことだという苦しい説明を行い、自然エネルギー目標の強化を行おうとしなかった。しかし2035年への温室効果ガス60%削減(二酸化炭素では65%削減)という高い目標が決まった今、こんな言い訳はますます通用しなくなっている。
 自然エネルギー財団は、4月11日に公表した「2035年エネルギーミックスへの提案(第1版)」の中で、2035年までに日本の電力の80%以上を自然エネルギー電力で供給することを提起し、その可能性と課題を明らかにした。日本政府には2035年までの60%以上の温室効果ガス削減を可能とする自然エネルギー導入目標を定め、2030年、2035年への導入加速を可能にする規制改革など必要な施策に取り組むことが求められる。

 今回のG7会合において日本政府がこだわったのは、GX基本方針の重点とする石炭火力へのアンモニア混焼発電に各国の賛同を得ることだったという。しかし、共同声明では発電部門でのアンモニアの利用はG7共通の方針としては認められず、利用をめざす一部の国があることが言及(note)されただけに終わった。しかも「1.5℃への道筋およびG7の目標である2035年までに電力部門を完全にまたは大部分を脱炭素化するという目標に整合する」という条件がつけられている。GX基本方針が予定する石炭火力へのアンモニア20%混焼だけでなく、50%混焼を行ったとしても、天然ガス火力を上回る二酸化炭素を排出する。2035年までの電力部門脱炭素化とは全く整合せず、石炭アンモニア混焼発電は共同声明の課した条件に合致していない。

 G7会合の直前、4月12日には気候変動イニシアティブに参加する日本の代表的な多数の大手企業を含む303の非国家アクターが、化石燃料から転換し、2035年までに大半の電力を自然エネルギーで供給することを求める声明を発表している。自然エネルギー財団は、日本政府が、こうした日本の企業や自治体の声に応え、化石燃料の利用継続をめざすGX戦略を早急に見直し、気候危機、エネルギー危機の回避に貢献する自然エネルギーによるエネルギー転換を進めることを強く求める。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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