公益財団法人 自然エネルギー財団は、本日、「日本の水素戦略の再検討:『水素社会』の幻想を超えて」を公表しました。
日本政府は、2017年に世界に先駆けて水素基本戦略を策定したことを誇り、「水素利用において世界をリードしていく」としてきましたが、策定から5年、最大の焦点としてきた家庭用燃料電池と燃料電池乗用車の普及は目標を大きく下回り、グリーン水素の生産においても日本の取組は欧州、中国などの後塵を拝しています。
本報告書では、水素の利用と生産に関する世界の動向、欧州、中国、オーストラリアなど各国の戦略を紹介した上で、「あらゆる分野で水素が利活用される水素社会」という政府のビジョンの誤りを明らかにしています。また、化石燃料由来のグレー水素・ブルー水素を優先する政府の政策が、これまで積み上げてきた日本企業の努力を損なうリスクを指摘しています。
本報告書が、日本の水素戦略の再構築に向けた建設的な議論に資することを期待しています。 <目次>
はじめに
第1章 脱炭素化への水素の役割―「水素社会」の幻想を捨てる
1 水素の用途の優先度
2 建築部門
3 産業・運輸部門
4 発電部門
第2章 席巻するグリーン水素
1 グリーン水素のコスト低下
2 エネルギー危機がグリーン水素の競争力を高める
第3章 世界の水素戦略の動向―欧州を中心に
1 EUの水素戦略
2 ドイツの水素戦略
3 中国の水素戦略
4 その他の国でのグリーン水素開発の動向
5 厳しくなる世界のブルー水素排出基準
第4章 日本の水素戦略の問題点と再構築の方向
1 優先度の低い用途の選択
2 化石燃料由来のグレー水素・ブルー水素の優先
3 国産グリーン水素生産の大きな遅れ
4 水素戦略の再構築に向けた論点
おわりに
(参考資料)
1 水素の種類による色分けとCO2排出
2 水素のコスト構造
3 水素の量の表現について
4 「表2 水電解装置の主な企業と開発状況」に関する各社公開情報