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ウクライナ侵攻によるエネルギー危機に対する提言自然エネルギーと省エネルギーこそ最大のエネルギー自立策

2022年4月18日

in English

 公益財団法人 自然エネルギー財団は、 ウクライナ侵攻によるエネルギー危機に対して、以下の提言を公表します。

今般のエネルギー安全保障上の危機は化石燃料の脆弱性に起因する

1) ロシアから世界に波及するエネルギー危機
 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、エネルギー安全保障上の危機が生じている。原油価格は、3月7日に1バレル=130米ドルを13年8ヶ月ぶりに超えた。これが、日本でのガソリン補助金やガソリン税のトリガー条項の発動の議論につながっている。特に欧州連合は、陸続きのロシアに化石燃料の輸入を大いに依存しているため 1、供給不安が高まっている。現時点では、ロシアは化石燃料の輸出を止めていないものの、2006年や2009年にはウクライナへのガス供給を一時的に停止し、パイプラインで繋がっている欧州諸国にも影響が出た過去があり、危機意識が高まっている。

 ウクライナへの侵攻に対して、欧米諸国は経済制裁でロシアに対抗している。米国政府は、3月9日にロシア産の化石燃料の輸入を禁止した。ロシア依存度の高い欧州連合も4月7日、ロシア産の石炭の輸入停止で合意し、更に原油、天然ガスの輸入禁止に関する議論も進めている。これら経済制裁は、輸出収入の半分を化石燃料に頼るロシアにとって痛手となるが、輸入国は代わりの供給元を探す必要がある上、化石燃料の国際的な価格高騰に直面することになる。

2) これまでのエネルギー安全保障は化石燃料の安全保障
 このようなエネルギー安全保障上の危機は、ロシアが世界有数の化石燃料輸出国であることに起因するが、そもそも化石燃料が世界のエネルギー供給の8割を占める一方で、その賦存は偏在しているという背景がある。その結果、化石燃料は大量に国際取引され、特に原油の輸出国は、政治的に不安定な権威主義体制に集中しているため、国際取引が政治的要因に左右され易く、国家政府がその対処に乗り出さざるを得ない。

 要するに、現在のエネルギー安全保障とは化石燃料の安全保障であり、今般の危機は偏在性や枯渇性といった化石燃料固有の脆弱性の表れにほかならない。日本を含む各国政府は、これまでにも化石燃料のために資源外交や市場介入、危機対応に振り回されてきた。戦争が発端となった価格高騰や供給不安としては、1970年代の石油危機や1990年の湾岸戦争など、枚挙にいとまがない。2022年現在、我々の経済社会は未だ化石燃料がなければ成り立たない。しかし化石燃料に依存している限り、このような安全保障上の危機の発生が不可避であることが、ウクライナ侵攻により改めて認識されたのである。

エネルギー危機克服へ、省エネルギーと自然エネルギーによる脱化石燃料が不可欠

 今般のエネルギー危機に対して、欧州連合は3月8日に発表したREPowerEU政策において、天然ガス輸入の多様化の他、エネルギー効率の向上や自然エネルギーの導入拡大による2027年までの脱ロシア、そして脱化石燃料の加速化を表明した。特に天然ガスについては、2022年内にロシアからの輸入量を3分の1にすることが目指されている。確かに短期的には、ロシア以外からの化石燃料の調達が求められ、例えばドイツではLNGターミナルの建設が行われる。しかし、化石燃料の消費総量が増えるのではない。今最も求められるのは、化石燃料の消費量をできる限り減らすことであり、それには供給面では自然エネルギーが、需要面ではエネルギー効率化・省エネルギーが、最有力の手段になる。

1) 化石燃料を代替するのは自然エネルギー
 自然エネルギーは、改めてそのエネルギー安全保障上の価値が評価されるべきである。自然エネルギーは世界各地に存在し、水力、風力、太陽光、地熱など多様なため、どの国であっても相当の規模で自給可能である。自然現象として再生産されるため、枯渇することがなく、限界費用がゼロであり、だから輸出入の対象にならず、価格高騰も供給不安も起きない。多様な地域でのローカルな利用(小規模分散型)が基本となるため、災害時のレジリエンス面で強く、地域経済循環にも寄与する。

 出力変動性が槍玉に挙げられることがあるが、柔軟な系統運用や系統増強、デマンドレスポンスや電気自動車を含む蓄電池、揚水発電などフレキシブルな需給調整の活用、更にはグリーン水素への変換(PtG)などによって、十分に対応可能である。原子力や石炭火力、天然ガス火力と比べて最も安い電源になっており、IEAのNet Zero by 2050では、2050年の世界の電源ミックスの88%が自然エネルギーになると予測されている。海外依存の化石燃料を代替するのは、純国産の自然エネルギーしかなく、導入を最優先で加速すべきである。

2) エネルギー効率の向上は最優先の政策
 世界の気候変動対策を先導してきた欧州や米国カリフォルニア州などでは、エネルギー効率の向上は「第1の燃料」と位置付けられ、最優先のエネルギー政策と認識されてきた。喫緊のエネルギー危機への対応策としても、エネルギー効率化による総燃料使用量の削減は即効性のある対策になる。2011年、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって、東日本が電力危機に直面した時も、電力需要がピークを迎える夏を乗り切ったのは、企業と家庭の省エネ努力だった。今回もロシアへのエネルギー依存度が特に高いドイツは、調達先の多様化に加え、企業や一般家庭のエネルギー効率化、省エネ、電化などによって、これまで55%だったロシアへの天然ガス依存度を本年中に約30%まで削減し、2024年夏までの依存脱却を目指している。新築・既築建築物のエネルギー効率化加速のための法改正も進めている。

 石油危機後に日本は省エネルギーで成功を収めたとされるが、近年は胸を張れる状況にない。製造業のエネルギー効率は過去30年横ばいであり、欧州などとくらべ住宅の断熱性能は低い。燃料価格の高騰への対応として、政府はガソリン補助金を導入した。特に深刻な影響を受ける企業や家計への対策は必要だが、本当に推進すべきなのは、建築物の断熱性能の強化、スマートハウスやデマンドレスポンスなど、DXも活用した合理的で効率的な省エネルギーへの投資拡大である。

 自然エネルギーも省エネルギーも、気候危機対策として議論されることが多かったが、同時にエネルギー自立への最重要の手段である。特に化石燃料に恵まれない2一方で、豊富な自然エネルギー資源に恵まれる日本は、気候危機とエネルギー危機の双方の解消のため、自然エネルギーとエネルギー効率化の2つを柱とした脱化石燃料を加速すべきである。

 当財団は、2020年8月に「2030年エネルギーミックスへの提案」を公表し、その中で、これからのエネルギー政策の目標として、脱炭素社会の実現とともに、化石燃料に依存しない安定供給の確保を掲げた。この目標のもとに、2030年の電源ミックスとして、エネルギー効率化の徹底を前提に、45%を自然エネルギーにすることを提起した。今般のエネルギー危機は、この方向性が正しかったこと、更に加速すべきことを示していると考える。

原子力やゼロエミッション火力は頼りにならない

1) 原子力は将来性に乏しい
 しかしながら日本では、昨年後半の欧州での天然ガス価格の高騰の頃から、「脱炭素の国際潮流の行き過ぎがエネルギー危機をもたらした」とか、「化石燃料への投資を増やすべき」という論調が出ていた。更にウクライナ侵攻を受けて、原発の再稼働を加速すべきとの声も強くなっている。

 原子力発電については、かねてより高コスト・高リスクのため世界的に新増設が進んでおらず、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題も含めて、将来性に乏しい。ウクライナでは、チョルノービリ(チェルノブイリ)やザポリージャの原発が初めて軍事攻撃の対象となったが、原子炉はこのような事態を想定して設計されていない。その後、フランスとイギリスが原発の新増設を表明した。しかし、両国はこれまでも原発開発を積極的に推進してきたにも関わらず、建設計画の頓挫や国内原子力産業の救済が必要になる事態に直面してきた。今回も、想定通りに進まない可能性が高い。

 日本では、石油危機後に原発に頼るエネルギー安全保障対策を進めてきたが、そもそもウラン燃料を輸入しているため国産と呼べないという問題以外に、原発の割合が最も高くなった1990年代にも、エネルギー自給率は22%止まりであった。2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて全ての原子炉が止まり、エネルギー自給率は6%にまで下がったのであり、これを「安定電源」と呼ぶのは無理があろう。既設炉の運転については、ベルギーのように期間延長を決めた国もある。日本では、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ」、「世界で最も厳しい水準の規制基準」に基づき、原子力規制委員会が認めたものを再稼働してきた。この独立した審査による再稼働の仕組みを緩めるようなことがあれば、原子力政策の根底が崩れる。

2) ゼロエミッション火力は海外依存
 他方、2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、原子力とともに、CCS付き火力やアンモニア火力、水素火力といったゼロエミッション火力への高い期待が示された。しかし、CCS付き火力は、CCS自体の技術的困難さやコスト高という問題点以外に、化石燃料の海外依存を前提としている点で、エネルギー安全保障に逆行する。

 アンモニアも水素も輸入を前提としたものが多い。オーストラリアから褐炭由来の水素をブルー水素として輸入するプロジェクトなどが進められているが、仮にゼロエミッションであったとしても、エネルギー自立に貢献しない。自給率を高めてくれるのは、国内での自然エネルギー電力によるグリーン燃料の生成に限られることを、認識すべきである。

 要するに、CCSを付けようが、アンモニア、水素に変換しようが、化石燃料由来の新たなエネルギーには課題が多い。エネルギー安全保障に必要なのは、脱炭素(ゼロカーボン、ゼロエミッション)だけでなく、脱化石燃料なのである。海外依存を続ける限り、日本がエネルギー危機に直面するリスクから逃れることはできない。非産出国の日本は、これらに頼らないエネルギー自立をめざすべきである。

3月の停電・需給ひっ迫は脱炭素が原因ではない

 2022年3月16日の福島県沖を震源とする地震を受けて、200万軒を超える停電が首都圏などで発生し、3月22日には電力需給ひっ迫警報が初めて発動された。これらの事態を太陽光発電の弱点のあらわれとしたり、原発再稼働が必要という議論の根拠にしようとするのは、まったく事態の本質をとらえていない。

 まず、3月の問題の直接的原因は、太平洋岸などに立地した複数の火力発電所の突然の運転停止である。16日の福島県沖地震により650万kWの火力発電所が使えなくなったため、需給バランスが崩れ、保護装置(UFR)が自動的に作動し停電が生じた。1機当たりの規模が大きい火力や原子力は、災害などによる運転停止の影響が大きいことは、2011年3月の計画停電で、更に2018年の北海道のブラックアウトで、学んだはずではなかったか。

 また3月22日については、急に供給力が足りなくなったわけではなかった。地震で停止した発電所のうち335万kWが引き続き停止していたことに加え、17日以降に他の要因で134万kWの発電所が停止し、これ以外にも定期検査によって止まっていた火力発電が多かったため、気温低下による需要増と相まって、4,840万kWという予想最大需要(3月21日17時40分時点)を満たせなくなるという判断となった3。事前にある程度予測可能だったはずが、需給ひっ迫警報の発令が夜8時になるなど対応が遅れた。発電所の絶対量が不足していたわけでも、燃料自体がなかったわけでもない。従って、火力発電所や原発を無理に建設・再稼働しても、また同じことは起き得る。

 悪天候により太陽光発電は出力が減少したが、曇天の時に発電減になるのは織り込み済みの現象であり、問題の本質は、日本では曇天でも発電する風力発電の導入が極端に立ち遅れてきたことにある。明らかになったのは自然エネルギーの弱点ではなく、国のエネルギー政策の弱点だ。

 逆に、3月22日に停電を免れたのは、節電の呼びかけに応えた企業、自治体、家庭の取組みにより500万kW以上の電力需要の削減が行われたためであり、また周辺エリアからの電力供給、即ち広域運用にある。福島第一原発事故の教訓として、北本連系線や東西FCを増強したことが、奏功した。これは、不十分だったとの指摘もあるが、政府の電力システム改革の成果と評価できよう。今後自然エネルギーを柱とした脱化石燃料を進めるには、広域運用やそのための系統増強は不可欠であり、安定供給のためにも更に進めるべきであろう。

日本のとるべき道は脱化石燃料の加速

 政府からは、2022年度冬季の電力需給に関し、「2012年度以降で最も厳しい」との見通しが公表されている。電力供給体制に関し、東日本大震災以降の10年余を総括して指摘されるべき最大の問題は、国が原子力発電所の再稼働に固執し、必要な代替電源、特に自然エネルギー電源の整備に十分な努力をしてこなかったことである。

 過去10年間で日本の自然エネルギー電源比率は10.4%から19.8 %に約10ポイント増えたが、同じ期間にドイツでは21.2%から44.5%へ20ポイント以上、英国では10.4 %から43.7%へ30ポイント以上も増加させている。ドイツや英国ではエネルギー自立にも脱炭素化にも貢献する電源を急速に拡大してきたのだ。

 日本のとるべき道は明らかである。自然エネルギーとエネルギー効率化を柱とした脱化石燃料を進めるべきであり、それは気候危機とエネルギー危機を解決してくれる。今般の危機は、その必要性と合理性を強く示しているのであり、間違っても化石燃料に回帰してはならない。

 もちろん、完全なエネルギー転換には20年、30年の期間がかかる。現実に今は8割のエネルギーを化石燃料に依存している以上、当面の間、化石燃料を欠かすわけにはいかない。転換の過程では、安定供給に支障が出ないような運用や、不利益を被る者への一定の配慮は必要だろう。しかしながら、それを理由に脱化石燃料を遅らせるようなことがあっては、本末転倒である。

 幸い日本は、欧州と比べれば、ロシアへの化石燃料の輸入依存度は高くない4。日本政府も、欧米の経済制裁と協調して、4月8日にロシアからの石炭輸入の将来的な禁止を表明した。エネルギー転換の加速のため、更にウクライナへの支援を強化するためにも、脱化石燃料を急ぐべきである。

  • 1天然ガスの46%、原油の27%、石炭の46%(2021年)。European Commission, REPowerEU, March 8, 2022.
  • 22019年度において、原油の99.7%、石炭の99.7%、天然ガスの97.8%を輸入に頼る。資源エネルギー庁『エネルギー白書』2021年版。
  • 3東京電力管内の2021年度の夏の最大需要は56.7GW(2021年8月26日)、冬の最大需要は53.8G W(2022年1月6日)であり、需給逼迫は起きていない。これらを満たす供給力は存在するのである。
  • 4天然ガスの8.3%、原油の4.8%、石炭(一般炭と原料炭の加重平均)の9.9%。資源エネルギー庁『エネルギー白書』2021年版。2019年度の数値。
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外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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