2019年世界の電力セクターの動向自然エネルギーがついに成長の主役に

トーマス・コーベリエル 自然エネルギー財団 理事長 / ロマン・ジスラー 自然エネルギー財団 上級研究員

2020年3月10日

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 少なくとも1985年以降、世界の総発電電力量は、世界金融危機の余波を受けた2008~2009年を唯一の例外として年々増加してきた1

 この総発電量の伸びに伴い、化石燃料を利用した発電も増え、そのため発電による温室効果ガスの排出量が全世界で増加した。自然エネルギーも健闘したが、これまでのところ発電量で増えた分を全て賄うには至っていない。とはいえ、2019年がひとつの転換点となったことは明らかである。自然エネルギーの増加量が需要を上回ったため、全世界の電力消費量が増えたのにもかかわらず、化石燃料による発電量が減少したのである。

 事実、全世界の総発電量の約75%を占める国々(中国、米国、欧州連合(EU)、インド、日本、その他のOECD諸国)から収集したデータによれば、自然エネルギー発電の増加は前年比で300 TWh近くに達し、総発電量の増加(同約230 TWh)を上回っている。

世界*の発電電力量の推移2019-2018年
*世界の総発電量の約75%を含む(中国、米国、EU、インド、日本など)。
注:12月までのデータ。ただし米国およびEUを除くOECD諸国については11月までのデータ。
出典:Agora Energiewende/Sandbag, China Electricity Council, Central Electricity Authority, U.S. Energy Information Administration, International Energy Agency の資料に基づき自然エネルギー財団作成  。


 この注目に値する成果をもたらした要素は2つある。1つはコスト競争力の高い自然エネルギー(主に水力、太陽光、風力)が引き続き堅調に伸び、全ての地域でプラスに推移したこと。もう1つは主に中国が牽引役だったが、総発電量の伸びが緩やかだったことである。
 
注:中国では「化石燃料その他」にバイオエネルギーを含む。
出典:China Electricity Council (中国), Central Electricity Authority (インド), Agora Energiewende/Sandbag (EU), U.S. Energy Information Administration (米国), International Energy Agency (日本およびその他のOECD諸国)の資料に基づき自然エネルギー財団作成  。


 また原子炉13基が閉鎖され、新設がわずか6基にとどまったにもかかわらず、原子力発電量も全世界で増加した2。その主な要因は、2011年に福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融事故以降、停止していた日本の古い原子炉が運転を再開したことにある。一方、自然エネルギーは、非化石エネルギー源の増加分の約4分の3を占め、その主役となった。

 ただし、原子力業界が2018~2019年の好調さを今年も維持することはないだろう。なぜなら2019年には、原子炉数でも発電設備容量でも永久停止される原子炉が、新規に稼働する原子炉を上回り、伸びが頭打ちとなったことは明らかだからだ。また2020年には、フランスと米国で原子炉が永久停止され、日本でテロ対策の遅れによる運転休止が予想されるなど、今後新規稼働によって増えると見込まれている原子力発電をある程度相殺すると思われるためだ。

 低コスト・低炭素の自然エネルギー技術を利用した発電量の増加のあおりを受けたのが化石エネルギーである。化石燃料による発電量は中国を除く全地域で下落し、前年比で150 TWhを超える減少となった。特に減少が目立ったのがEUと米国、日本である。インドの減少量は比較的小さいものの、グローバルな気候変動対策にとって大きな脅威となる国のひとつであると目されていることを踏まえると、同国で減少したという事実が持つ重要性は大きい。

 グローバルな気候変動のリスクを高めると知りながらも石炭エネルギーに投資してきた人々は資金を失い、破綻することとなった。このことは、金融セクターにおける行動のモラルに影響を与えるだろう。ただし、企業の倒産によって収入を失った人々を保護することが、政治の重要な責務のひとつとなるのは明らかだ。
 
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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