大規模発電は最も安全か?ポーランドのブラックアウト危機によせて

ボー・ノーマーク EIT InnoEnergy Scandinavia 産業戦略エグゼクティブ / 自然エネルギー財団 上級政策アドバイザー

2020年8月21日

in English

 ポーランドの電力システムは今年の6月22日、ごく普通の電力需要の状態にもかかわらず、広範囲にブラックアウト(大規模な停電)を引き起こすところだった。1
 
 この事態から様々な教訓が得られた。その1つは、ブラックアウトは電力需要がピークの時に発生するとは限らないという点である。これまで数多くの研究が電力需要のピーク時を対象に進められてきたが、実際に世界各地で発生した主要なブラックアウトの大半は電力需要のピークとは関連づけられていない。電力システムは通常であれば、需要の状況に合わせて調整できる。ポーランドのケースでは、相当な規模の発電設備が保守点検で停止していたために、予備力が低下してしまったことが要因だった。
 
 もう1つ教訓として挙げられるのは、近隣国との系統連系の重要性だ。このおかげで、ポーランドの電力システムはブラックアウトを引き起こさずに済んだ。報道によると、次の通りである。
 
 「ポーランドの系統運用者であるPSEは緊急に約3000MW(メガワット)の電力を、スウェーデン、ドイツ、チェコ、スロバキア、リトアニアから輸入せざるを得なかった。」
 
 ここで重要な点は、ポーランドがスウェーデンとリトアニアとのあいだを高圧直流送電(HVDC)で連系していることである。HVDCは緊急時に「仮想電源」の役割を果たし、各国の電圧の状態に関係なくポーランドへ電力を供給できる。
 
 最後に、今回のケースは自然エネルギーによる発電の重要性を示す事例でもあった。危機的な状況の中で、太陽光発電が640MWの電力供給に貢献した。電力システムにおいて自然エネルギーが増加すると、どんなことが期待できるだろうか。自然エネルギー100%の電力システムを作り上げるためには、次のような課題があると言われる。
 
  • - 連系線の容量拡大
  • - 蓄電容量の増強
  • - デマンドレスポンスの拡大
  • - セクターカップリングの拡大(熱利用セクターと輸送セクターを電化することによる新たな蓄電機能の共有など)
  • - 発電・蓄電・需要変動に対する分散型ソリューションの促進
  • - 再定義した電力システムを運用するための新たなビジネスモデルの構築
 
 これらの電力システムにおける修正は、しばしば反対派から自然エネルギーの「弱点」と評されることがある。彼らが完全に誤解しているのは、新たな電力システムは既存のものよりも強靭であるという点だ。オーストラリアと英国が導入した蓄電設備が好例で、電力システムの周波数調整のようなサービスを格段に効率的に実行できる。というのも応答性に優れているからである。ポーランドの例では、古い発電設備が「緊急時の予備」として維持されていたことも明らかになった。今日の多くの事例が示すように、蓄電設備のほうがさまざまなサービスにおいて緊急用の電源よりも競争力のある解決策になる。
 
 大規模な発電設備を基盤とする電力システムが最も強靭である。これは神話に過ぎない。電力システムにおいて需要のピーク時の脆弱性が重要な課題である、というのも神話だ。自然エネルギーを活用した現代の電力システムは、系統連系の拡大、蓄電能力の強化、電力・輸送・熱分野のセクターカップリング、デマンドコントロール、新たなビジネスモデルにより、いっそうクリーンで低価格、そして強靭なものになる。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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