米国のClean Energy Buyers Association(CEBA)に加盟する企業は、日本に対する現在そして今後計画する投資の中で、新しくて、信頼性が高く、コスト競争力のあるクリーンエネルギーを優先する。CEBAはエネルギーの利用企業と協力事業者で構成する業界団体で、クリーンエネルギーの調達を促進し、全世界の電力セクターの脱炭素を加速させるために、市場と政策における解決方法の実現を目指している。CEBAの400社以上の加盟企業の時価総額は20兆ドルを超え、世界最大のクリーンエネルギー購入企業がメンバーになっている。
CEBAの加盟企業は日本における1000社以上にのぼるバリューチェーンのパートナーとともに、脱炭素の意欲的な目標を持っている。2030年までにバリューチェーン全体で100%カーボンフリーのエネルギーを求めている企業もある。日本はアジアで2番目に大きい経済大国であり、世界の製造業の市場で3番目の規模があり、CEBAの加盟企業にとってはエネルギーの市場として重要な国である。しかし日本では現在のところ再生可能エネルギーの供給量が限られていて、国全体の電源構成でわずか25%にとどまっている。
企業が日本でクリーンエネルギーを活発に調達できる方法を提示するために、CEBAは「問題提起:エネルギーの需要家が日本で望むこと 」を公表した(提起全文:日本語版・英語版)。この問題提起では、日本においてクリーンエネルギーのコストを低下させ、投資と調達を加速させるための以下の方法を論じている。
- 2035年までに系統を流れる電力の80%をクリーンエネルギーで供給できるようにするために、政府の投資を増加させ、発電設備の建設用地を新たに開放し、系統インフラを改善し、許認可を効率化する。
- 規模の経済によってクリーンエネルギーを低コストで普及させるために、事業者間の競争と政策決定における需要家の参加を促進する。
- エネルギーの消費者に対して、コスト効率の良いクリーンエネルギーの選択肢を改善して拡大する。
日本では2014年以降、再生可能エネルギーの導入量を年平均7.6GW(ギガワット=100万キロワット)追加してきたが、最近の2年間は4~5GWに減少してしまった。企業の報告によれば、コスト効率の良い再生可能エネルギーを日本で調達できる割合は電力需要の25%に過ぎず、世界平均の50%よりも低い状況にある。
日本では再生可能エネルギーの導入コストが世界で最も高く、事業用の太陽光発電においては世界全体の加重平均の2倍以上になっている。半導体業界団体のSEMIが運営するEnergy Collaborativeの分析では、日本でエネルギーを利用する企業は2030年までのクリーンエネルギーの目標に対して20~50%の不足に直面する可能性がある。
このような課題がある一方で、日本には2050年までに気候中立を達成するために、そして再生可能エネルギーを3倍に増やす約束を果たすために、再生可能エネルギーの十分なポテンシャルがある。さまざまな研究による推定では、太陽光、風力、地熱資源のポテンシャルは670~3710GWにのぼる。米国のローレンスバークレー国立研究所によると、日本で2020年から2035年までのあいだに年平均10GWの再生可能エネルギーを導入できれば、卸売電力市場の平均価格は2020年と比べて6%低下する。
日本政府は国のエネルギー政策を方向づけるために3年に1回改定するエネルギー基本計画の改定を進めている。経済産業省はクリーンエネルギーへの移行を通じて経済成長を促すために、GX推進戦略の効果を最大限に発揮することを目指している。
日本政府が戦略を策定する過程において、CEBAの問題提起を考慮するように強く求めたい。クリーンエネルギーの投資と活用を加速させることによって、重要な産業に対する新たな投資を呼び込み、産業競争力を高め、電力コストを低減させ、自給力と回復力を改善し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するための機会を日本にもたらすことができる。
CEBAとCEBAの加盟企業は日本とのパートナーシップにより、回復力のあるカーボンフリーの電力システムを構築することを支援していきたい。CEBAは米国国務省と共同で推進するClean Energy Demand Initiativeを通じて、世界全体でクリーンエネルギーの活用を加速させるための官民協働の取り組みを広げている。CEBAはSEMIのEnergy Collaborativeのパートナーでもあり、SEMIが日本に対する提言をまとめたポジションペーパーを支持する。
コラム原文(米国CEBA):CEBA Advocates for Clean Energy Policy and Procurement Solutions in Japan (21 November 2024)