CIGREパリ大会2026 参加報告自然エネルギー財団、自然エネルギー90%時代の系統計画に関する考察を発表

2026年10月28日

本活動報告では、2026年8月に開催されたCIGRE(Conseil International des Grands Réseaux Électriques, 国際大電力システム会議)パリ大会への参加を振り返り、自然エネルギー比率90%以上を想定した日本の地域間連系線に関する研究発表と、系統計画の将来をめぐる議論を紹介する。

自然エネルギー財団は、2025年より日本CIGRE国内委員会(JNC)分科会C1(電力システムと経済)に参画している。2026年パリ大会に投稿した論文が採択され、同年8月の国際会議には、自然エネルギー財団から高瀬 香絵(シニアマネージャー)と中西 要祐(シニアフェロー)が参加した。

CIGREにおける国際的な議論

CIGREは、電力システムに関する専門知識を蓄積・共有し、技術的な課題を議論する国際的な専門家コミュニティである。創立以来、「電力・メーカー・アカデミアが一体となる」という理念が受け継がれてきたことに大きな特色がある。近年は、若手や女性の参画、新エネルギー分野への対応など、参加者や議論の対象も広がっている。自然エネルギー財団も、電力会社や機器メーカー、大学・研究機関などの専門家とともに、自然エネルギーの導入促進や政策提言の視点から議論に参加した。

パリ大会の技術セッションは、投稿論文を個別に発表する形式とは異なり、複数の論文を踏まえてスペシャルレポーターが提示する設問に対し、参加者が発言(Contribution)し、議論を深める形式で進められる。財団もこの場で、日本の系統計画の進展を評価するとともに、自然エネルギーの導入が国の想定を上回る場合への備えなどについて意見を述べた。

自然エネルギー比率90%以上を想定した地域間連系線の評価

自然エネルギー財団から投稿した論文「日本において2040年度自然エネルギー比率90%以上となった場合の地域間連系線によるアデカシーと柔軟性の評価1」は、地域間連系線の拡張が日本の電力供給の安定性や柔軟性にどのような影響を与えるかを分析した。スペシャルレポーターからは、この論文について以下のコメントの評価を受けた。

本論文では、2040年までに自然エネルギーによる発電電力量の割合が約90%に達する日本の電力システムを対象に、地域間連系線の増強が電力供給の安定性(アデカシー)と柔軟性の確保にどのように寄与するかを評価している。特に、自然エネルギー資源が豊富な北海道・東北と、東京などの大規模需要地を結ぶ高圧直流送電(HVDC)ルートに焦点を当てている。

分析の結果、送電容量と供給信頼度の間には強い非線形の関係があることが示された。送電容量が不足する電力システムでは、設備の停止による影響を受けやすくなり、送電容量が一定の閾値を下回ると、供給支障電力量と供給信頼度に関するリスクが急激に増加することが明らかになった。

また、地域間連系線の増強は、燃料輸入コストの削減と電力システムのレジリエンス(強靱性)の向上を通じて、大きな経済的便益をもたらすことも示している。2

C1セッションでの発言

C1セッションでは、自然エネルギー財団の投稿論文を含む44編の論文が優先議題1(PS1)に分類され、これらを踏まえてスペシャルレポーターから3つの課題が提示された。そのうち、次の設問(Q1.10)について、高瀬がプレゼンテーション形式で発言(Contribution)を行った。

Q1.10 不確実性、相互運用性、将来の拡張性が同時に重要となる状況において、優れた送電計画とはどのようなものか3。

発言(Contribution)内容は以下の通り。

日本の系統計画については、かつては必要に応じて個別に、費用を抑えながら送電網を増強する傾向が強かったのに対し、近年ではマスタープランが策定され、エネルギー基本計画やGX政策と結びついた長期的・戦略的な計画へと進展している点を評価した。

一方で、今後の系統計画では、想定を下回る場合のリスク(downward risk)だけでなく、想定を上回る場合のリスク(upward risk)も考慮すべきであると指摘した。特に、自然エネルギーの導入が国の計画を大きく上回る可能性は、コストと便益の観点からも十分に考えられる。その際、系統の増強が適時に行われなければ、送電制約による出力抑制が拡大し、利用可能な自然エネルギーの便益が失われる。さらに、発電可能な電力を需要地に届けられないことは、アデカシー(供給力の充足)の観点からも課題となり得る。このため、導入量の上振れを含む複数の将来シナリオを考慮し、必要な系統増強を適切な時期に実施できる計画が重要となる。

さらに、系統計画の策定過程において、市民社会(civil society)の意見をどのように取り入れ、計画に反映させていくかも、今後の重要な課題として提起した。

図1 C1セッションで発言(contribution)

ポスターセッション

ポスターセッションでも、今回の論文を紹介し、さまざまな国からの参加者と、自然エネルギーの導入拡大に伴う電力システムの課題について意見を交換した(図2)。

図2 ポスターセッションでの意見交換

 

【参考】CIGRE(国際大電力システム会議)について
CIGREは1921年にフランス・パリで設立された、電力システムに関する専門知識を共同で開発・共有する国際的な非営利団体である。4分野16技術領域において、研究委員会(Study Committee)などを通じて技術的な課題を討議し、その成果を技術出版物として公開している。日本CIGRE国内委員会(JNC)は1953年に設立され、国際的な技術交流を支えてきた。

  1. 原タイトル:Evaluation of Adequacy and Flexibility of Interconnection in case of Japan with over 90% Renewable Electricity Ratio in FY2040
  2. 以下の原文をもとに日本語訳を作成:Evaluation of Adequacy and Flexibility of Interconnection in case of Japan with over 90% Renewable Electricity Ratio in FY2040. This paper evaluates how interregional transmission expansion enables adequacy and flexibility in a highly renewable Japanese power system (~90% renewables by 2040), focusing on the HVDC corridor linking resource-rich northern regions (Hokkaido and Tohoku) to major demand centres such as Tokyo. The analysis highlights strong non-linear reliability effects, showing that systems with insufficient transmission capacity become highly sensitive to outages, with sharp increases in unserved energy and reliability risk once capacity falls below critical thresholds. It also shows that transmission expansion delivers substantial economic benefits by reducing fuel import costs and improving system resilience.
  3. 原文:What does good transmission planning look like when uncertainty, interoperability, and future scalability all matter at once?

<関連リンク>
・CIGREパリ大会2026 投稿論文(C1-10951):閲覧は有料
・CIGREパリ大会2026 公式サイト
・日本CIGRE国内委員会 公式サイト

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织