公益財団法人 自然エネルギー財団は、本日、解説「バイオマス炭素サイクルの気候中立性:森林バイオマスの『炭素負債』論争を理解する」を公表しました。
バイオエネルギーは電力だけでなく熱や燃料などに利用可能で、エネルギーシステムの脱炭素化に向けて不可欠です。中でも、木質バイオマスによる供給は重要な役割を果たしますが、森林から直接取り出されて利用される森林バイオマスは、一部から「カーボンニュートラルではない」「石炭よりも悪い」という批判的なキャンペーンの対象となっています。加えて科学的にも、前提の置き方によって得られる結論が変わってしまう「やっかいな問題」の様相を呈しています。
そこで本解説では、現在のバイオエネルギー利用に伴うCO2算定の基礎となっているIPCCガイドラインにおけるバイオマス由来炭素の計上方法などを解説しながら、論争の全体的な枠組みを整理しました。その上で、議論の前提となるべき、森林バイオマス利用の実態を解説しています。加えて、近年の企業の炭素会計における議論の最新動向も紹介しつつ、今後の建設的な議論のポイントも3点に絞って示しています。
[解説]
バイオマス炭素サイクルの気候中立性
森林バイオマスの「炭素負債」論争を理解する
要旨
I. はじめに
1. バイオエネルギーの重要性
2. 木質バイオマスへの注目
3. 持続可能性を巡る論争
4. 本解説の狙いと議論の範囲
II. 論争の全体像
1. バイオエネルギー利用に伴う炭素の流れ
2. バイオマス由来の炭素について
3. 批判の論拠
III. 森林バイオマス利用の実態
1. マテリアル利用に伴う残渣が利用されている
2. 低質の丸太が燃料利用されることがある
3. 小括:利用実態のまとめ
IV. 企業の炭素会計における進展
1. 企業レベルでの算定方法の現状
2. 近年の議論:土地利用セクター内での算定方法の詳細化
V. まとめ:「やっかいな問題」を超えて
1. 森林システム全体で考えること
2. 地域の実態の理解に基づいた政策・制度を整えること
3. 企業の情報開示を促していくこと