21世紀に入り、中国のエネルギー消費量は経済成長と共に急速に増加し、今日では、世界最大のエネルギー消費国、最大のCO2排出国となっています。石炭中心のエネルギー構造により、様々な環境負荷物質が排出され、世界全体にとっても、中国自身にとっても、深刻な環境問題を引き起こしています。こうした問題の解決をめざし、中国はエネルギー構造転換を進め、自然エネルギーの拡大を強力に進めています。
本レポートでは、長らく石炭に依存してきた中国で、自然エネルギーへの転換が加速している状況、これを可能にした政策を中国の文献、データを詳細に分析にして明らかにしています。
中国がいかに早く低炭素化を進め、更には脱炭素化を進めるかは、中国だけではなく、世界の命運にもかかわる重要性を有しています。自然エネルギー財団は、本報告書が日本を含むアジアの脱炭素化を進めるための議論に貢献することを期待します。
<目次>
第1章 中国におけるエネルギー構造転換の進展
1-1 中国エネルギー構造転換の背景とキーワード
1-2 一次エネルギー構造の低炭素化
1-3 電力部門の低炭素化
第2章 中国における自然エネルギー発電の促進政策
2-1 発展の初期段階
2-2 「政府定価」と入札プロジェクト
2-3 固定価格買取制度
第3章 中国における自然エネルギー発電の課題と今後の展望
3-1 出力抑制問題への対策
3-2 グリッドパリティ・プロジェクト
3-3 自然エネルギー発電の今後の展望
おわりに
主な調査結果
・石炭消費量はすでに横ばいになり、エネルギー消費量全体に占める割合は2018年には初めて6割を割り込んでいる。
・自然エネルギーへのシフトは電力部門で最も早く進んでいる。その背景には、2006年の「再生可能エネルギー法」の施行をはじめとする政府の強力な推進政策がある。
・2018年の中国の自然エネルギー発電設備総容量は発電設備容量全体の38%を占める。
・コスト低下も進み、一部の地域では、すでに風力と太陽光の発電コストが火力発電を下回っている。
・2020年以降、補助金を要しない自然エネルギー発電の本格的な普及が予測されている。