再エネタスクフォース会議資料等でのロゴ表示問題について

2024年3月26日

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3月22日に開催された「第30回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース会議(以下再エネTF会議)」に提出された「構成員提言の参考資料集」の表紙以外の全てのページに中国国家電網のロゴが表示されるという問題が生じました。

この資料は、タスクフォースの構成員である当財団の大林ミカ事業局長がその一部を作成したものです。昨年12月に開催された第29回再エネTF会議の「構成員提言の参考資料集」の数ページ、経済産業省、金融庁の検討会議に大林事業局長が提出した資料の一部(最終ページ)にも同様のロゴが表示されていました。また、この他にも国際会議などに提出した資料の最終ページにもこのロゴ表示が確認されています。関係者の方々に多大な迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。

このロゴが表示された経緯について以下にご説明しますが、今回のロゴはセキュリティ上のスタンプや「透かし」ではなく、白地の背景の上に置かれたために見えづらくなっていた白いロゴです。また作成された資料の内容は中国国家電網とは一切関係のないものです。

なお、この問題を契機に、主にSNS上で、当財団の活動について様々な見解が表明されていますので、これについても事実関係をご説明させていただきます。

ロゴが表示された経緯

このロゴは、もともと2016年5月25日、26日にソウルで開催された当財団主催の国際送電網に関するワークショップでの講演資料に含まれていたものです。25日は公開ワークショップ、26日はアジア開発銀行、国際エネルギー憲章事務局、韓国電力公社、中国国家電網、モンゴル政府エネルギー省などからの招待者向けの専門家会合として開催されました。

当財団は2016年7月に、国内のエネルギー専門家などからなる「アジア国際送電網研究会」を設置し、アジア国際送電網の構築に関する調査研究を開始しました。当時、当財団以外にも、中国国家電網、韓国電力公社、日本創成会議など様々な機関からの国際送電網に関する提案が行われていました。

研究会での議論に資するため、2016年12月、これらの諸提案を比較検討するための資料を大林事業局長が作成しました。その一部として2016年5月26日のワークショップでの中国国家電網の資料の中の欧州から東アジアに至る国際送電網の構想地図の表示されたスライド(図1)を、他のいくつかの事例とともに取り上げました。

図1 2016年5月のワークショップで中国国家電網が使用したスライド
 
図2 2016年12月に財団での内部検討用に作成したスライド

この時、もとのスライド(スライドマスター)の上部にあった青いバーを削除し、下部の文章を日本文に変えました。また説明文の表示部分を狭くして、地図が見える部分を増やしました。この作業を行った時に、スライドマスター(スライドのテンプレート)にあった青いバーと中国国家電網の白いロゴがそれぞれ別画像であることに気づかず、青いバーを削除したことでロゴも削除されたと思ってしまいました。しかし実際には、スライドマスターに含まれていた白いロゴは、白いスライドになじんだまま見えていませんでしたが、削除されておらず、大林事業局長のファイルのスライドマスターにそのまま残されてしまいました。

このスライド(図2)は研究会の資料には使われませんでしたが、白いロゴの入ったこのスライドマスターは、大林事業局長が別の資料を作成する時に、プレゼン資料の最後に財団のロゴだけを表示するスライドを作る場合などに使用されました(図3)。

図3

今回、金融庁、経済産業省などの会議資料としてロゴが確認されたのは、資料の最後に使われたこのスライドです。再エネTF会議の資料は、会議資料のフォーマットにあわせるために、大林事業局長が通常、プレゼン資料を作る際に用いる財団のロゴがヘッダーに入ったスライドではなく、最終ページ以外も白いロゴの入ったスライドをベースに作られたために、白いロゴが白地になじみ見えないまま他のスライドにも含まれてしまいました。

大林事業局長の資料はアップル社のパソコンMacのKeynoteというアプリで作成されています。Keynoteでも白地の背景の白いロゴは、通常、見ることができないため、存在に気が付くことができませんでした。PDFに変換しこれをiPad、iPhoneまたは一部のブラウザで閲覧した場合に、ロゴが見えるのですが、公表前の点検が不十分で、ロゴがPDFで見えることに気がつかず公表にいたってしまいました。

なお、SNSなどで2016年5月のワークショップでの中国国家電網のロゴと再エネTF会議でのロゴに違いがある、という意見がありますが、これはスライドサイズの違い(ワイド画面→標準画面)、KeynoteファイルからTF会議資料作成に使われたWindowsパソコンのアプリであるパワーポイントのファイルへの変換時におきる細かい変化によるものと判断しています。

以上が、今回、ロゴが表示されることになった経緯です。三つの政府会議に提出された資料、また他の会議の資料の内容自体は、当初の中国国家電網の資料とは全く関係がありません。資料作成と提出にあたり、より深く検査をすれば防ぐことのできる事態でした。関係者の皆様に、改めてお詫び申し上げます。また、未だ把握されていない同様の事例がないかも再確認してまいります。同時に、財団では再発防止のため、資料作成にあたってのチェック体制を強化してまいります。

財団の活動に対するSNSなどでの意見について

今回の問題を契機に、主にSNSで財団の活動についての様々な意見、憶測が表明されています。その中で特に多い中国国家電網との関係及び国際送電網に関して、ご説明いたします。

自然エネルギー財団は、2011年9月に開催した設立イベントにおいて、3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故が明らかにした日本のエネルギー問題への対応策として、自然エネルギーの拡大とともに、北海道から九州までを結ぶ高圧直流送電網の整備、更にはアジア国際送電網の構築を提案しました。

アジアを結ぶ国際送電網に関しては、日本創成会議、中国国家電網、韓国電力公社など様々な機関から構想が発表されてきました。2016年3月に中国国家電網のよびかけで、国際的な送電ネットワーク構築をめざす国際的非営利団体、グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構(GEIDCO)が設立されました。

GEIDCOには世界各国の電力会社、大学・研究機関、送電分野の世界的企業などが参加しており、国際送電網構築の議論を進めるために意義があると判断し、財団も参加し理事会メンバーとなりました(自然エネルギー財団設立者・会長の孫正義氏はこの時、副会長に就任しましたが、現在は退任しています)。

財団と中国国家電網のかかわりは、もっぱらGEIDCOを通してのものです。2016年3月から2019年11月にかけて財団が開催した6回のイベント(シンポジウム、ワークショップ)に中国国家電網またはGEIDCOのメンバーが登壇しています(これら2016年5月のワークショップの2日目、26日の専門家会合以外はすべて財団のWEBサイトで内容を見ることができます)。

国際情勢の変化もあり、自然エネルギー財団では、東アジアにおける国際送電網構築の議論を現在は活発に行っていません。財団はGEIDCOの理事会メンバーには残っていたものの、GEIDCO、中国国家電網と財団の関わりも2020年以降はまれになっています。今回の事態を受け、無用な誤解を避けるために、自然エネルギー財団はGEIDCO自体から脱退することとしました。当然ながら理事会メンバーからも外れます。

一方、国際的には現在でも国際送電網に関する調査研究、議論が活発に行われています。国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)が主導する"Green Power Corridor"、アジア開発銀行とモンゴル政府が中心となっている"Northeast Asia Power System Interconnection"などのプロジェクトでは、東アジアを対象とした国際送電網が議論されています。また、英国政府とインド政府はCOP26以降、"Green Grid Initiative / One Sun, One World, One Grid"と呼ばれる、太陽光と風力を最大限利用するため、各国の送電網を接続する構想を推進しています。

加えて、大量の自然エネルギー電力を系統に統合し安定的な電力供給を実現する方法については、蓄電池コストの急激な低下を受けてオーストラリアなどで新たな試みが進んでいます。自然エネルギー財団では、こうした新たな技術開発の動向、国際情勢の変化なども含め、日本にふさわしいエネルギーシステムのあり方を検討していきます。

財団の活動はすべて自然エネルギーを基盤とした社会の構築をめざすものであり、気候危機回避をめざす脱炭素社会構築に向けた活動です。

1.5℃目標の実現のためには、中国も含めた世界全体の取組みが必要です。米国政府が全般的に厳しい米中関係の中でも、気候変動対策分野では2国間会談を開催し、中国を巻き込むことを重視しているのは周知のとおりです。日本政府もこの認識では共通していると理解しており、例えば環境省は気候変動対策に関し、中国政府からの参加者も含めた様々な取組みを行っています。

財団が中国の電力会社などとかかわる場合も、こうした基本的な認識に立つものです。自然エネルギー財団は特定の国や地域、更には、特定企業・団体の利益を代表するものではありません。今後とも、日本のエネルギー転換、日本と世界の脱炭素化の加速のために科学的知見に基づいた様々な活動を進めていきます。 

 

<関連リンク>
自然エネルギー財団と中国国家電網の関係について(2024年4月8日)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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