先進企業の自然エネルギー利用計画(第21回)セブン&アイ・ホールディングス、太陽光発電の電力を全国の店舗に自然エネルギー100%へ省エネも徹底

石田 雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2021年8月18日

[詳細レポート]
先進企業の自然エネルギー利用計画(第21回)
セブン&アイ・ホールディングス、太陽光発電の電力を全国の店舗に
自然エネルギー100%へ省エネも徹底

(以下、概要版)

  コンビニエンスストアのセブン-イレブンを中核とするセブン&アイグループは、全世界の事業で使用する電力を2050年までに自然エネルギー100%へ移行する計画だ。国内と海外を合わせて7万店を超える店舗が対象になる。このうち国内にある2万店以上の店舗が使用する電力だけで年間に45億kWh(キロワット時)にのぼる。

店舗の敷地内で自然エネルギーの電力100%を目指す

 膨大な数の店舗で自然エネルギーの電力を100%使用できる体制を作り上げるために、可能な限り店舗の敷地内で電力を作って効率的に利用することが基本方針になっている。加えて省エネ対策を徹底して実行することにより、電力の使用量を削減して自然エネルギー100%を実現しやすくする。

 今後の導入拡大に向けて、自然エネルギーの電力100%で運営する店舗の実証実験を神奈川県内のセブン-イレブン11カ所で実施中だ(写真1)。店舗の屋根には、表と裏の両面で発電する高効率の太陽光パネルを設置した。セブン-イレブンの標準的な規模の店舗では出力35kWまでの太陽光パネルを搭載できる。

写真1.自然エネルギーの電力100%で運営する店舗の外観 出典:セブン&アイ・ホールディングス

 太陽光による昼間の余剰電力を夜間に利用するために、電気自動車の使用済みバッテリーを回収・再生した蓄電池を組み合わせる。それでも電力が不足する場合には、小売電気事業者を通じて卒FIT(固定価格買取制度の買取期間終了後)の住宅用太陽光発電の電力を購入する(図1)。自家発電と購入電力の両方とも、建物の屋根を利用した環境負荷の低い太陽光発電の電力で店舗の需要を満たすことができる。ただし現状では蓄電池のコストがまだ高い。この点を解消でき次第、同様の構成による自然エネルギー100%の店舗を全国各地に展開する計画だ。

図1.実証店舗における自然エネルギー100%の電力供給体制 出典:セブン&アイ・ホールディングス

コーポレートPPAで新設の太陽光発電所の電力を長期購入

 自然エネルギーの電力100%の利用を目指して、新たな取り組みも進めている。米国を中心に企業のあいだで活発なコーポレートPPA(電力購入契約)をいち早く採用した。自社の建物や敷地を利用したオンサイト型のコーポレートPPAは日本でも導入事例が増えてきたが、遠隔地にある発電所と契約を結ぶオフサイト型のコーポレートPPAでは先進的な事例だ。契約した事業者はNTT(日本電信電話)傘下のNTTアノードエナジーグループである。

 NTTアノードエナジーグループがセブン&アイグループ専用の太陽光発電所を2カ所に新設して、発電した電力をセブン&アイグループの店舗に20年間にわたって供給する(図2)。太陽光発電所の規模は2カ所を合わせて3.1MW(メガワット=1000キロワット)である。2021年6月からセブン-イレブンの店舗40カ所で、さらにスーパーのイトーヨーカ堂の店舗でも2022年1月から新しい太陽光発電所の電力を利用できるようになる。

図2.新設の太陽光発電所の電力を長期契約で購入 出典:セブン&アイ・ホールディングスほか

 太陽光発電所を新設することによって、火力発電所や原子力発電所の電力を代替できる。CO2(二酸化炭素)排出量の削減や放射性廃棄物の低減につながる。新しい自然エネルギーの発電所が供給する“追加性(additionality)”のある電力は、気候変動の抑制に効果的で、海外の先進企業は優先的に採用している。日本国内でも追加性のある電力を重視する企業が増えていて、セブン&アイグループは代表例である。

 全世界に広がる店舗を中心に、環境負荷が低くて追加性のある自然エネルギーの電力を拡大して、2030年にグループ全体のCO2排出量を50%削減(2013年度比)、さらに2050年までに実質ゼロに削減することがセブン&アイ・ホールディングスの目標だ。中長期の目標達成に向けて、省エネと創エネ、さらに電力の購入面でも先進的な取り組みを続けていく。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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