先進企業の自然エネルギー利用計画(第18回)三菱地所、高層ビル群に自然エネルギーの電力東京駅の周辺エリアから脱炭素を推進

石田雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2020年7月8日

 東京駅の周辺に数多くの高層ビルを展開する三菱地所は、2050年までに国内外の事業で使用する電力を自然エネルギー100%で調達する目標を掲げている。都心部を中心に最新の技術と設備を導入して省エネ性能の高いビルを増やしながら、自然エネルギーの電力に切り替えて、CO2(二酸化炭素)の排出量を大幅に削減する計画だ。2050年には87%削減(2017年度比)を目指す。

地上37階建ての高層ビルの電力をバイオマス発電に

 2020年4月から、東京駅の近くにそびえ立つ2つの高層ビルで使用する電力がバイオマス発電に切り替わった。地上37階建ての「丸の内ビル」と22階建ての「大手門タワー・ENEOSビル」である(写真1)。丸の内ビルは東京駅前のシンボルになっているオフィス・商業施設の複合ビルで、多数の企業や店舗が入居している。このビルで年間に使用する電力量の約60%がバイオマス発電になった。東京湾岸にある大規模な木質バイオマス発電所から電力を供給する。
 

写真1.バイオマス発電の電力を利用する「丸の内ビル」(左)、「大手門タワー・ENEOSビル」(右) 出典:三菱地所


 三菱地所がCO2排出量の算定対象に含めるビルは、国内外を合わせて77カ所(うち海外4カ所)ある。各ビルで使用する電力量を合計すると年間に11億kWh(キロワット時)を超えるが、その全量を自然エネルギー100%に切り替える計画である。2018年度の時点では1.3%、2カ所のビルでバイオマス発電の電力を利用開始した2020年度には3%強になる見込みだ。これを2030年までに25%へ引き上げる。それぞれのビルの電力契約を更新するタイミングで自然エネルギーに切り替えていく方針である。

 一方でオフィスビル以外の商業施設や分譲マンションでは、太陽光発電設備を導入して自家消費を推進する。三菱地所グループは全国9カ所にアウトレットモール(メーカー直営店で構成するディスカウント型ショッピングセンター)を展開していて、そのうちの2カ所に大規模なカーポート型の太陽光発電設備を導入している(写真2)。駐車場の上部に約4000枚の太陽光パネルを設置して、発電規模は1MW(メガワット=1000キロワット)に達する。発電した電力はアウトレットモールで自家消費している。
 

写真2.カーポート型の太陽光発電設備を導入した「酒々井プレミアム・アウトレット」 出典:三菱地所

建設工事の現場でも自然エネルギーの電力を利用開始

 三菱地所が自然エネルギーの電力を増やしてCO2排出量を削減する理由はほかでもない。ビルの運営にもサステナビリティ(持続可能性)が求められるようになったからだ。環境負荷の低いビルを増やすことが立地エリア全体の価値を高め、将来に向けて不動産事業を継続的に拡大させるための基盤を構築できる。

 新たに開発中のプロジェクトで注目を集めるのが、東京駅の北側で進む「東京駅前常盤橋プロジェクト」である(図1)。地上に2棟と地下に2棟の合計4棟で構成するプロジェクトは、2018年から建設工事が始まった。4棟のうち最初に着工したA棟(地上38階建て)は2021年4月末に完成する予定で、本格的な工事が進んでいる。A棟の建設工事を請け負う戸田建設が2019年9月から、自然エネルギーの電力を現場で利用開始した。超高層ビルの建設工事に自然エネルギーの電力を採用するのは日本で初めての試みだ。
 

図1.建設工事で自然エネルギーの電力を利用開始した「東京駅前常盤橋プロジェクト」の完成予想図(左側の黒いビルがA棟) 
出典:三菱地所

 工事現場で使う自然エネルギーの電力は、固定価格買取制度で買い取られた太陽光発電所などの電力と非化石証書(トラッキング付)を組み合わせたものである。CO2を排出しない自然エネルギーの電力として利用できる。戸田建設と三菱地所はともに、自然エネルギーの電力を推進する国際イニシアティブの「RE100」に加盟している。トラッキング付の非化石証書はRE100でも自然エネルギーの電力を調達する手段として認められている。三菱地所の自然エネルギー100%の目標達成に含めることはできないが、バリューチェーン全体(製品の原材料調達から販売した製品の使用・廃棄まで)のCO2排出量の算定対象になり、スコープ3の排出量の削減に生かせる。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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