先進企業の自然エネルギー利用計画(第12回)城南信用金庫、日本の企業で初めてRE100を達成非FITの電力とJ-クレジットを活用

石田雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(ビジネス連携)

2019年9月26日

 
 東京都と神奈川県で86カ所の店舗を運営する城南信用金庫(写真1)は、事業で使用する電力を2019年7月から自然エネルギーに切り替えた。自然エネルギー100%の利用を目指す国際イニシアティブの「RE100」に加盟する日本企業の中で、いち早く目標を達成して注目を集めている。

写真1.城南信用金庫の本店(東京都品川区)と屋上に設置した太陽光パネル 出典:城南信用金庫

製紙会社のバイオエネルギー100%の電力を選択

 城南信用金庫が年間に使用する電力量は約1000万kWh(キロワット時)にのぼる。これだけの規模の電力を自然エネルギー100%で調達する方法は日本国内では限られる。固定価格買取制度(FIT)の適用を受けた発電設備の電力は自然エネルギーとして認められない。FITで売電していない“非FIT”の中から城南信用金庫が選択したのは、製紙会社で発電したバイオエネルギーの電力である。
 
 製紙会社では紙の原料になるパルプを化学的に製造する工程で「黒液(こくえき)」を大量に排出する。黒液の主成分は炭素と灰であり、燃料として利用できる。生物由来の黒液で発電した電力はバイオエネルギーの一種で、二酸化炭素を排出しない自然エネルギーの電力とみなせる。製紙会社の工場で排出する黒液を使って、年間を通して安定した量の電力を調達できる。
 
 城南信用金庫は2012年から、電力の購入先を選択できない一部の店舗を除いて、使用する電力を小売電気事業者のエネットから購入している。新たに採用したバイオエネルギーの電力もエネットから購入する。ただし一部の店舗は他社が所有する建物に入居しているため、通常の電力を使いながら自然エネルギー由来の「J-クレジット(再エネ発電由来)」を組み合わせる方法を採用した。いずれは自然エネルギーの電力契約に切り替える方針だ。
 
 電力の切り替えと並行して、省エネルギーと自家発電にも取り組む。城南信用金庫は1945年(昭和20年)の設立から74年が経過して、一部の店舗では老朽化が進んでいる。古い店舗を建て替える時に、最新の省エネルギー設備と自家発電設備を導入する(写真2)。新たに建て替えた店舗の中には旧店舗と比べて年間の電力使用量を50%削減できた事例もある。現在のところ自然エネルギーの電力は少し割高だが、省エネルギーによって購入量を減らせばコストを抑えられる。今後は電力使用量の多い本店と事務センターを中心に省エネルギーに取り組んでいく。
 
写真2.2013年に建て替えた中野支店(東京都中野区) 出典:城南信用金庫

 2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を契機に、城南信用金庫は経営方針として「原発に頼らない安心できる社会へ」を掲げた。その一環で中小企業と個人を対象に、省エネルギーと自然エネルギーの設備の導入に融資する「エナジーシフト」に力を入れている。2015~2018年度までの4年間で自然エネルギー関連の融資実行額は累計で80億円を超えた。
 
 最近では近隣の地域を含めてソーラーシェアリング(営農型の太陽光発電)を推進中だ。これまでに千葉県で2カ所、神奈川県と茨城県で1カ所ずつ、ソーラーシェアリング事業に融資した。ソーラーシェアリングは耕作放棄地に太陽光パネルを設置して、パネルの下で農作物を栽培する。地域の農業を再生する効果を期待できることから、今後も融資を通じて支援していく方針だ。地域密着型の金融機関として、自然エネルギーを利用して地域の経済を活性化する。そのために顧客と接する店舗でも自然エネルギー100%の電力を使い続ける。
 

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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