円卓会議自然エネルギーの普及と市場統合のあり方

2020年10月30日

 自然エネルギー財団は、2020年10月30日に、「自然エネルギーの普及と市場統合のあり方」と題したクローズドの円卓会議を開催した。

 日本においては、自然エネルギーの電力の比率が2020年上半期では23%に達したなど自然エネルギーの電力の比率が高まっている。自然エネルギーの主力電源化を目指していく中で、電力市場への統合および効率的かつ急速な普及を両立させていくことが求められている。新たな再エネ促進法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法:2022年度施行)では、従来の固定価格での買取から市場への直接販売および市場プレミアム(FiP)制度への移行が企図され、自然エネルギー発電事業者が自ら市場に参加することを求めている。

 同時に、日本では、電力市場の本格的自由化も同時並行で進められている。複数の市場(需給調整市場、容量市場、ベースロード市場)が新たに創設されるなどから、「過渡期」にあるのも事実である。こうした日本の現状を踏まえつつ、自然エネルギーをさらに普及させていくための制度のあり方について、先進的に進める海外の成果や課題を踏まえつつ、有識者とともに議論した。

 本会議のスピーカーは以下のとおりである。

ドルフ・ギーレン 国際再生可能エネルギー機関 (IRENA) イノベーション・テクノロジーセンターセンター長
下村 貴裕 経済産業省資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 政策課 電力産業・市場室長
ラルフ・クリストマン ドイツ連邦経済エネルギー省 電力部門 再生可能エネルギー部門 副部長
カーリー・レイトン 英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省 クリーン電力戦略・展開担当CfD政策マネージャー
木村 啓二 自然エネルギー財団 上級研究員
 

 IRENAからは、自然エネルギーを電力システムに大規模に導入していくためには、制度や技術的、市場設計の革新が重要であることを示された。また、ドイツ、英国、自然エネルギー財団からは、欧州における自然エネルギーの市場統合の経験から得られた知見について報告があった。ドイツは2012年から市場統合を進めているが、最初期は自然エネルギーの電気の販売業者(アグリゲーター)がいなかったため、その育成に重点をおいた。英国では、2002年~10年は市場ベースの値決めを行っていたが、コストの増加が問題となり、競争入札および市場価格変動リスクを低減した制度(Contracts for Difference)を導入した。その結果、自然エネルギーの落札価格が急激に下がった。また、日本からは、自然エネルギーの主力電源化を実現していくための課題と制度改善の方向性について報告があった。

 上記報告を踏まえて、自然エネルギーの市場統合を進めていく上で重要な視点について、欧州の専門家:クリスチャン・レドル氏(アゴラ・エナギーヴェンデ 欧州エネルギー連携 シニアアソシエイト)、ベン・バックウェル氏(世界風力エネルギー会議 事務局長)、トーマス・コーベリエル理事長(自然エネルギー財団)からコメントがあり、また国内からの参加者からの活発な議論が行われた。 

 重要な視点として、自然エネルギーへのエネルギー転換を通じて脱炭素社会の構築という大きな命題がある。それを効率的かつシステム上の信頼性を損ねないように進めるということが重要であり、その目的のために、市場が活用される点を見逃してはならない、ということである。とりわけ、太陽光発電や風力発電は初期投資コストが大きく、運転費が少ない。そうした電源に、市場価格変動のリスクにさらすことはコストを不要に引き上げることにつながる。このため、多くの欧州諸国は、スライディングFiPを採用しているのである。つまり、自然エネルギーを単に市場価格変動にさらすことのみを優先させる仕組みはかえってコストを引き上げる懸念がある、ということである。

 電力市場の設計については、自然エネルギーのコスト優位性は高まっているため、炭素税などを通じて社会的費用も含めて、透明で公平な市場の規制が重要であることが指摘された。同時に、自然エネルギーの市場統合をコスト効率的に進めていくためには、段階的に進めることが重要であるとの視点が示された。特に初期段階では市場での電力取引を低リスクで行える制度設計が重要であるといった指摘がなされた。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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