エネルギー危機で高まるコーポレートPPAの効果

石田 雅也 自然エネルギー財団 研究局長

2026年4月21日

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 イランをめぐる紛争によって生じたエネルギー供給の危機だが、決して一過性のものではない。2022年にはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、天然ガスの価格が高騰して、日本も大きな影響を受けた。電気料金が年間を通じて1kWh(キロワット時)あたり7円を超える大幅な上昇になり、企業も家庭も電力コストの増加に悩まされた。政府が緊急対策で補助金を出して価格低下を図ったが、現在でも以前の水準には戻っていない(図1)。今回の中東における紛争によって、石油だけではなく天然ガスの価格も高騰して、電気料金が再び上昇することは確実だ。電気料金に燃料費が加算されるのは3~5カ月遅れる仕組みになっているため、6月分の料金から値上がりが予想される。
 

図1.電気料金の推移(全国平均)

* 2025年度の電気料金は2025年4月~2026年1月の暫定値。
注:再エネ賦課金と消費税を含まない。高圧と低圧は政府の電力・ガス料金支援による値引きを含む(2022~2025年度)。
出典:電力・ガス取引監視等委員会の「電力取引報結果」をもとに自然エネルギー財団が作成


 日本の電力の7割近くを化石燃料による火力発電が占めている。この状況が抜本的に変わるまでのあいだ、電力の需要家みずからが対策を講じる必要がある。最も効果的な対策は、国内の自然エネルギーで発電した電力を長期契約で購入するコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)を締結する方法だ。太陽光発電を中心に日本でも自然エネルギーのコストが低下してきた。建物の屋根などを事業者に提供して太陽光発電設備を導入する「オンサイトPPA」であれば、標準的な電気料金よりも低い単価の電力を購入できる(図2)。通常は20年間の契約で、単価は固定のため、電力の購入コストを長期に固定できるメリットがある。しかもCO2(二酸化炭素)を排出することなく、気候変動の抑制にも貢献できる。オンサイトPPAの契約事例は大企業だけではなく、中小企業や自治体・大学にも広がってきた。
 

図2.電気料金とオンサイト/オフサイトPPAのコスト比較(高圧の契約、再エネ賦課金を含む)

* 2025年度の電気料金は2025年4月~2026年1月の暫定値。
注:消費税を含まない。オンサイトPPAは再エネ賦課金の対象外。
オンサイトPPAとオフサイトPPAのコストは自然エネルギー財団による推定(2026年2月時点)。発電設備の規模や立地条件などによって変わる。
オンサイトPPAのコストは架台が不要な場合を想定。オフサイトPPAのコストは託送料と小売手数料を含む。
電気料金(全国平均)は政府の電力・ガス料金支援による値引きを含む(2022~2025年度)。
出典:電力・ガス取引監視等委員会の「電力取引報結果」をもとに自然エネルギー財団が作成


 建物に太陽光発電設備を導入できない場合には、事業者に委託して遠隔地に発電設備を建設して、発電した電力を長期契約で購入する「オフサイトPPA」がある。オフサイトPPAも通常は20年の長期契約で、単価は固定だ。オフィスビルなどで使用する高圧の電力で比較すると、オフサイトPPAの単価は全国平均の電気料金と同等の水準になっている。化石燃料の価格高騰の影響を受けることなく、CO2も排出しない。企業に求められるCO2排出量の削減に加えて、電力のコストを固定できるメリットがあることから、オフサイトPPAの契約件数も増えている(図3)。すでに契約した企業は今後も長期にわたって電力コストの上昇を抑制できる。オンサイトPPAとオフサイトPPAの両方で電力需要の多くをカバーできれば、エネルギー危機の影響を受けにくい体制になる。 
 

図3.オフサイトPPAの契約件数(公表案件)

* 2026年度の契約件数は1月1日~4月15日の暫定値。
注:ニュースリリースで需要家名を公表した案件を自然エネルギー財団が集計。
契約を公表した年で分類、必ずしも契約を開始した年ではない。
出典:自然エネルギー財団


 ただしコーポレートPPAには課題が残っている。オフサイトPPAでは地域の反対を受けない適地を確保することや、系統接続に時間がかかる(特に高圧以上)ことを想定して早めに計画を進める必要がある。大規模な工場などで使用する特別高圧では、電気料金の単価が低いため、オフサイトPPAのコストが相対的に高くなるケースが多い。地方の企業がオンサイトPPAやオフサイトPPAを締結するためには、地元の事業者に委託することを想定する必要があるが、規模が小さい事業者にとっては20年間の運転資金の調達がむずかしい。国や自治体による支援が不可欠である。
 

 <関連リンク>
「コーポレートPPA:日本の最新動向 2026年版」(2026年3月10日)
「今こそ化石燃料からの転換加速を:日本を守り強くするエネルギー政策の提案」(2026年4月17日)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织