RE100が技術要件を改定、石炭混焼を禁止証書の償却確認も主要国を対象に徹底

石田 雅也 自然エネルギー財団 研究局長 / RE100 Technical Advisory Group メンバー

2025年4月4日

 世界各国の有力企業400社以上が加盟する国際イニシアティブ「RE100」が、自然エネルギーの電力の調達基準を規定する技術要件(Technical Criteria)を約2年ぶりに改定した。変更点は以下の3つ。

  • 石炭混焼による電力の使用禁止
  • 証書の償却確認の徹底
  • コーポレートPPA(電力購入契約)における15年ルールの緩和

 3つの改定ポイントのうち、石炭混焼の禁止と証書の償却確認については、加盟企業が2026年1月以降に使用する電力(2027年のCDPの調査に対する開示対象)から適用する。

 日本ではRE100に加盟していない企業でも、望ましい自然エネルギーの電力の調達基準として、RE100の技術要件を参考にするケースが多い。前回(2022年10月)の改定では、追加性(新しい自然エネルギーの発電設備を追加することによるCO2=二酸化炭素=の削減効果)の観点から、運転開始後15年以内の発電設備の電力・証書を使用するように加盟企業に求めた(本コラムでは「15年ルール」と呼ぶことにする)。この15年ルールは日本でも多くの企業や自治体が自然エネルギーの電力・証書の調達基準として重視するようになった。今回の改定項目についても、電力を供給する発電事業者や小売電気事業者は適切な対応を求められる。

石炭と自然エネルギーの混焼発電を認めず、ほかの化石燃料も検討

 RE100は世界の送配電網を2040年までにカーボンフリーに移行することを目標に掲げている。化石燃料と自然エネルギーの混焼発電を認めると、CO2を排出する火力発電所の運転が長期に続いてしまう懸念がある。特にCO2排出量の多い石炭火力発電は早期に削減する必要がある。従来の技術要件では、木材などのバイオマスと石炭を混焼発電した場合には、バイオマスの比率に応じて自然エネルギーの電力として使用することを認めてきた。今後は加盟企業による使用を禁止して、世界各国で石炭火力発電の削減を促していく。

 日本政府は火力発電のCO2排出削減策として、アンモニアと石炭の混焼発電を推進している。この発電方法も石炭火力を長期に継続させる可能性がある。RE100が石炭混焼を禁止したことを受けて、日本政府は戦略を見直す必要がある。RE100では引き続き石炭以外の化石燃料の混焼についても検討を進めていく方針だ。2040年までに送配電網をカーボンフリーに移行する目標を実現するためには、天然ガスによる混焼発電も適当な時期に禁止しなくてはならない。

 RE100は世界の有力企業が自然エネルギーの電力を100%調達・使用することを通じて、全世界のCO2排出量の削減を加速させることがミッションである。加盟企業はCO2削減に効果が大きい自然エネルギーの電力を積極的に採用することが求められている。先進的な行動を通じてリーダーシップを発揮することにより、加盟していない企業を含めてCO2削減に取り組む活動を全世界に拡大する重要な役割を担う。

証書の償却を確認できていない比率、日本では34%に

 改定の2つ目である証書の償却は、RE100が当初から技術要件で規定してきた「信頼できる主張(credible claims)」を可能にする重要な点だ。企業をはじめ需要家が自然エネルギーの電力の使用を証明できる最善の方法が証書である。日本でも経済産業省が定めた「電力の小売営業に関する指針」の中で、小売電気事業者が自然エネルギーの電力を販売するにあたって、非化石証書の使用を要求している。

 証書を使用したことを証明するためには、償却(無効化)の手続きが必要になる。償却によって、同じ証書が重複して使われることを防止できる。世界各国で使われている電力を対象にした証書では、償却の手続きを実行しないと効力を発揮できない仕組みになっている。ところがRE100の事務局が加盟企業の証書の使用状況を調べたところ、2022年の時点で証書の使用・償却を確認できていない比率が全体の18%を占めていた。日本では34%にのぼった。その多くは、小売電気事業者から購入したケースとみられる。

 加盟企業が信頼できる主張に基づいて自然エネルギーの電力を調達・使用するように、改めて技術要件で徹底することになった。需要家が証書を確認できないと、自然エネルギーの電力を調達・使用したことを証明できない。さらに前回の改定で規定した15年ルールに合う電力を使用していることも、証書に記載されている発電設備の運転開始日を確認しなければわからない。

 新しい技術要件では、証書が一般的に使われている状況(in common use)にある国においては、証書の償却確認を義務づける。欧米各国をはじめ、世界各国・地域の多くで証書が一般的に使われている。日本では非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジット(再エネ発電)の3種類のほかに、一般的に使われている状況にはないがI-RECの使用も認められる。自家発電とオンサイトPPAに関しては、送配電網を経由しないで電力を供給するため、証書がなくても自然エネルギーの電力の使用を証明できる。RE100では自家発電とオンサイトPPAに対しては証書を求めない。

コーポレートPPAの15年ルール、国によって要件を緩和

 前回の改定で設けた15年ルールに関しては、例外規定が設けられている。加盟企業が新しい自然エネルギーの発電設備の追加に貢献する場合には、運転開始から15年を超えても使い続けることができる。対象になるのは自家発電、コーポレートPPA(オンサイトPPA、オフサイトPPA)のほか、特定の発電設備の電力・証書を小売電気事業者から長期契約で調達する場合である。発電設備の運転開始よりも前に契約を締結して、運転開始時点から購入することが条件になる。最初の購入者(original off-taker)に限って認められる例外規定だ。

 ところが国によっては、発電設備の運転開始時に一定期間の試運転を義務づけている国がある(韓国など)。今回の規定変更によって、法令で試運転を義務づけている国・地域においては、新規の発電設備が試運転を終了して営業運転を開始する時点で加盟企業が電力・証書の購入を開始すれば、最初の購入者として15年ルールの例外規定を受けることができる。ただし試運転期間は1年以内に限る。日本では法令で試運転を義務づけていないため、この規定は適用できない。

 15年ルールの例外規定に関しては、自然エネルギーの発電設備をリパワリング(設備のリプレース・増強)した場合でも適用できることが明記された。リパワリングした発電設備の運転開始時点から電力・証書を購入した場合には、15年を超えて使用することが認められる。日本では老朽化した発電設備のリパワリングが風力や水力を中心に進められている。RE100の加盟企業が最初の購入者になると、15年ルールの例外規定を受けることができる。老朽化した発電設備のリパワリングを後押しする効果が期待される。

<参考資料>
技術要件:RE100 Technical Criteria(2025年3月24日)
よくある質問:Frequently Asked Questions (FAQs): Technical(2025年3月24日)
信頼できる主張:Making credible renewable electricity usage claims(2016年4月)
石炭混焼の位置づけ:Co-firing Q&As: RE100's technical criteria update 2025(2025年4月3日)

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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