シリーズ「自然エネルギー活用レポート」No.23風力と太陽光のハイブリッド発電で収益安定福岡県・北九州市で進むエネルギー拠点化構想

石田雅也 自然エネルギー財団 シニアマネージャー

2020年2月27日

 製鉄業で発展してきた福岡県の北九州市が、風力発電を中心とするエネルギー産業の拠点づくりに力を入れている。臨海工業地帯の一角を占める「響灘(ひびきなだ)地区」を対象に、2010年から長期計画で新たな産業を育成中だ。3つのフェーズに分けて取り組む計画の中で、風力発電と太陽光発電を組み合わせた「響灘ウインドエナジーリサーチパーク」が2018年1月に運転を開始した(写真1)。大型風車2基とメガソーラーの構成で5500世帯分の電力を供給する。1基で出力3.3MW(メガワット)の風車は、洋上に設置するのと同型の耐久性のある機種を採用した。これから沖合に展開する大規模な洋上風力発電プロジェクトに向けた実証・研究拠点の役割も果たす。
 
写真1 「響灘ウインドエナジーリサーチパーク」の風車と太陽光パネル(後方に見える風車は他社の風力発電所)

太陽光発電を組み合わせたことで収益が安定

 北九州市は響灘地区を風力発電関連産業の総合拠点として発展させる「グリーンエネルギーポートひびき」の計画を進めている(図1)。フェーズ1では最先端の風力発電設備を陸上に建設して、その成果をフェーズ2の洋上風力発電につなげる。フェーズ1のプロジェクトは市の公募で選ばれた3つの事業者が風力発電所や太陽光発電所を建設する。そのうちの1つがハイブリッド型の響灘ウインドエナジーリサーチパークである。全国各地で自然エネルギーの発電所を開発するジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)と、風力発電のメンテナンスサービスを専門とする北拓が共同で、事業会社を設立して運営している。
 
図1 響灘地区で実施する「グリーンエネルギーポートひびき」の事業スケジュール O&M:オペレーション&メンテナンス 出典:北九州市

 JREと北拓は2013年に事業者に選ばれた後、風況調査や環境アセスメントを実施して建設の準備を進めた。ところが用地の地盤が軟弱だったため、当初の設計を大幅に見直す必要が生じた。風車の基礎の下に地中深くコンクリートの杭を打設して強度を高めたほか、液状化を防ぐための地盤改良も実施した。全体で1万枚を超える太陽光パネルも同様に軟弱な地盤の上に設置しなくてはならない。パネルを搭載する架台の基礎はコンクリート製の杭を組み上げる工法で造成した。

 運転開始から2年が経過して、発電量は想定どおりに推移している。風力と太陽光を組み合わせたハイブリッド発電の大きなメリットは、風力単独の場合と比べて毎年の売電収入が安定することである。風力のほうが発電量は多いが、年によって風況の差が大きいために発電量の変動幅が大きくなる。一方の太陽光は風力よりも年間の発電量が安定している。両方を組み合わせることで、年間に得られる売電収入の変動を小さく抑えられる。金融機関から融資を受けて事業を運営しているため、毎年の返済余力を維持するうえで収益の安定は重要になる。

 響灘地区では長期計画のフェーズ2として、大規模な洋上風力発電の開発プロジェクトが始まっている。約2700ヘクタール(27平方キロメートル)の海域に、最大で220MWの風力発電設備を建設する計画だ(図2)。完成すれば日本で最大の洋上風力発電設備になる。このプロジェクトは5社の共同事業体が担当する。そのうちの1社はハイブリッド発電所を運営している北拓である。北拓は響灘地区に風力発電のメンテナンスセンターを開設して、ハイブリッド発電所を1日24時間の体制で遠隔監視している。今後このセンターで技術者を育成しながら、洋上風力発電の遠隔監視とメンテナンスにも備える。
 
図2 響灘地区の沖合に展開する洋上風力発電の風車設置予定エリア ha:ヘクタール 出典:ひびきウインドエナジー

 風力と太陽光によるハイブリッド発電所の開発経緯から運転状況、設備の詳細やメンテナンスの体制までを、現地のヒアリングをもとにレポートにまとめた。洋上を含めて風力発電関連産業の総合拠点づくりを進める北九州市の長期計画についても紹介する。

外部リンク

  • JCI 気候変動イニシアティブ
  • 自然エネルギー協議会
  • 指定都市 自然エネルギー協議会
  • irelp
  • 全球能源互联网发展合作组织

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