連載コラム 自然エネルギー・アップデート

COP21 means Business

2015年11月12日 末吉竹二郎 自然エネルギー財団 副理事長

 COP21が間もなく開かれる。あの忌まわしいCOP15(2009、コペンハーゲン)の失敗から早や6年。世界は漸くにしてCO2排出削減の国際枠組みを手にすることになる。

 では、ポストCOP21の世界はどうなるのか。様々な変化が見込まれる中、最も重要と思うのが社会の価値観の転換であろう。短縮して言えば、CO2を出し続けることは「悪いこと」になったのである。悪いこととなれば、社会から嫌われる。規制の対象となり、間違いなくCO2排出に金銭を含む様々な負担がかかることになる。

 その一方で、CO2排出を減らすことは社会が快く受け入れる「善いこと」となる。善いこととなれば、社会が大いに褒めてくれ、減免税の対象となるなど、様々な優遇を受けることになる。

 このCO2排出を巡る価値観の転換、即ち、「CO2を出すことは悪いこと。CO2を減らすことは善いこと」はビジネスにとって大きな意味を持つ。なぜならば、ビジネスがその本業を通じて温暖化問題の解決に取り組むことは、Scientifically correct であり、Politically correctであり、間違いなくSocially correctとなるからだ。とすれば、それは必ずビジネスにとって Economically correctになる。

 こうした視点を持って見ると、COP21はビジネスにとって、大きなリスク要因として立ちはだかることになる。全世界が温暖化対策に真正面から取り組む中、それに逆らう行動をとることは、Scientifically incorrect であり、Politically incorrectであり、そして、Socially incorrectとなるからだ。社会のステークホルダーをすべて敵に回しても成り立つビジネスはこの世に存在しない。つまり、反温暖化対策は明らかにEconomically incorrectになるのである。

 リスクの裏返しはチャンスである。COP21がもたらす様々なリスクに上手に対応すれば、チャンスが広がる。COP21が目指すのは単純にCO2排出を削減しようと呼びかけることではない。真面目にCO2排出削減に取り組むビジネスが正当に報われる社会システムをつくることにある。CO2排出削減を一方的支出の「コスト」ではなく、確かな利益を生み出す「投資」になるような経済や社会を構築することにある。これから世界が目指すグリーン経済とはそのような経済を言うのだ。世界が究極の目標とする持続可能な社会とはそのような社会を言うのである。

 COP21 means Business. それは決して忘れてはならない視点である。


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