連載コラム 自然エネルギー・アップデート

ドイツ・自然エネルギー電力比率、あらたな記録更新! 英語オリジナル

2015年8月20日 クレイグ・モリス Renewables International 編集者 および
EnergyTransition.de 筆頭執筆者

この7月、ドイツの電力需要に占める自然エネルギーの比率が、数時間の間78%となり、史上最高を記録した。7月は、太陽光の発電量が原子力を上回ったともみられている。つい最近まで流布されていた自然エネルギー懐疑論と対峙する意味で、この2つの新記録は大きな快挙である。しかし、まだ象徴的な記録にすぎず、ドイツにも長い道のりがあることは確かでもある。

7月25日に、ドイツの電力需要に占める自然エネルギーの比率が、数時間の間、78%となった。土曜日で、電力消費量が比較的低かったことに加えて、南部は晴天、北部は強風という珍しい組み合わせに恵まれて、太陽光と風力の発電量が同時に増えたのである。下に示した週間発電量推移グラフを見ると、7月22日の早朝のように、太陽光と風力の発電量が2-3ギガワット近くまで落ちる時間帯もある。しかしその時間帯でさえ、バイオマスや水力も含めると、自然エネルギーが国内需要の25%近くを占めている。なお、この数字には電力輸出も含まれているので、国内電力需要量を扱う際には減算する必要がある。


出典:Energy-Charts.de、フラウンホーファーISE

電力輸出については、今回の出来事を通じて、原子力の柔軟性のなさも露呈された。ドイツのスポット電力価格がフランスのスポット価格より低くなったのに、フランスは原子炉の出力を降下させられなかったために、値開きの利点を活用できず、安い電気を買うことができなかった。

ドイツの原子力による発電量はかなり低くなっている。 今年6月には、原子力発電所が一基永久停止し、残り8基となった。そして8基のうち3基が、定期保守や燃料交換のため、7月の一定期間は運転を停止していたため、この月の原子力発電量は1月の半分程度だった。

2013年7月の太陽光の発電量記録はまだ破られていないが、2015年7月も、それに迫る勢いだった。7月の初期推定値は、太陽光と原子力がほぼ同量発電し、太陽光がわずかにリード(1%未満)しているだろうというものだが、しかし、この差よりも、同時推定値の誤差の方が大きい可能性もある。つまり、2015年7月にドイツで初めて太陽光が原子力の発電量を上回ったと証明するためには、残念ながら2016年9月まで待つ必要があるからだ(同時統計は、すべての測定器の発電量の総計ではなく、「大部分の」測定器の値から算出された推定値にすぎないため)。

電力ではない、暖房や交通を賄うための石油が大きな比率を占めているので、自然エネルギーは、まだ、エネルギー需要の11−12%程度にすぎない。しかしそれでも、20年前に原子力推進派の否定論者が「4%以上の自然エネルギー電力は不可能だ」と語った言葉は、このような新記録が達成されるごとに、徐々に葬り去られていく。自然エネルギーは、今年の上半期の消費電力の32.5%を賄い、2014年の27%から着実な伸びをみせている。進行中の洋上風力プロジェクトも多く、自然エネルギー比率は迅速に成長し続けると予測されている。ドイツは、自然エネルギーが予想を上回る速さで成長できることを証明しつつある –そのスピードがあまりに早いため、原子力の段階的廃止が進んでいるにもかかわらず、石炭火力発電は、(原子力の穴埋めで増えることなく)今年の上半期だけでほぼ3%ポイント減少したのだ。


クレイグ・モリス(@PPchef)は、ドイツのエネルギー転換の筆頭著者。彼はPETIT PLANETEの代表を務める傍ら、Renewables Internationalを毎平日執筆している。


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