連載コラム
シリーズ 自然エネルギー活用レポート

シリーズ「自然エネルギー活用レポート」No.3〈概要版〉
水上に太陽電池パネル3700枚が浮かぶ池
―岡山県・笠岡市でフロート式の太陽光発電所―

2017年6月28日 石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー

 瀬戸内海に面して雨が少ない岡山県の笠岡市には、海を埋め立てた干拓地が広がっている。その一角に、雨が降った時の水量を調整する「十一番町遊水池」がある。広さが2万6000平方メートルの池の水上に、3700枚を超える太陽電池パネルが並んでいる。大阪ガスグループのエナジーバンクジャパンが運営する水上フロート式の太陽光発電所だ。水に浮かぶ高密度ポリエチレン製のフロートの上に太陽電池パネルを設置して、年間に300世帯分の電力を供給できる。

フロートのコストは陸上設置の3倍、ただし土地の造成が不要

 「十一番町遊水池」の水上太陽光発電所は1年前の2016年6月に運転を開始した(写真1)。太陽電池パネルの1枚あたりの発電能力は260ワット、合計3744枚で973kW(キロワット)になる。年間の発電量は108万kWh(キロワット時)を見込んでいる。


写真1 「かさおか十一番町遊水池 水上ソーラー発電所」の景観
出典:エナジーバンクジャパン

 発電した電力は全量を固定価格買取制度で中国電力に売電する。2014年度に買取制度の認定を受けたため、買取価格は1kWhあたり32円(税抜き)になり、年間に3450万円の売電収入を想定している。計画どおりに発電を続けることができれば、建設費と毎年の運転維持費を含めて15年間で回収できる見通しだ。

 池の水上に太陽光発電所を建設する場合に、最大の課題は太陽電池パネルを浮かべるためのフロートの設置である(写真2)。エナジーバンクジャパンは2014年に兵庫県の小野市にある農業用ため池に水上フロート式の太陽光発電所を稼働させた実績がある。それと同じフロートを笠岡市の発電設備にも採用した。フランスのシエル・テール社の製品で、日本国内でも採用実績が多い。


写真2 フロートと太陽電池パネルの設置状態

 ただし陸上に太陽電池パネルを設置する場合と比べてコストが割高になる。エナジーバンクジャパンの木谷威彦インフラ事業部技術戦略室部長によると、「陸上で標準的に使うアルミ製の架台に比べて、フロートの価格は3倍くらい高い」。加えてフロートや太陽電池パネルを水上に設置する工事にも陸上より時間がかかる。

 その代わりにメリットもいくつかある。第1に陸上のような土地の造成工事が不要だ。第2に池の水上には用途がないことから、陸上と比べて用地の貸付料が安い。そして第3のメリットとして、陸上よりも太陽電池の発電量が多くなる。太陽電池の特性で夏の昼間などにパネルの温度が上昇すると発電量が低下する問題がある。水上では冷却効果によって発電量の低下が起きにくい。「小野市の発電所の実績から想定すると、年間に数%程度は発電量が増えるとみている」(木谷氏)。

 こうした点を総合的に考えると、水上フロート式の太陽光発電所の収益性は陸上に設置する場合と比べて劣らない。ただし水上ならではの対策が必要になる。水上に浮かべるフロートは風で流されてしまうため、フロート全体の周囲からワイヤーを垂らしてアンカーで池の底に固定する必要がある。笠岡市の遊水池では底の土壌が柔らかくて、通常のアンカーでは抜けてしまうことが判明、アンカーの形状を変えて抜けにくくする対策を実施した。

 さらに運転を開始した後に点検や保守を効率的に実施できるように、太陽電池パネルの発電状況を遠隔で監視できるシステムを導入したほか、特定のパネルの故障を陸上で検知する装置も備えた。手間のかかる水上の保守作業を可能な限り減らす対策である。それでも法令で決められた年1回の定期点検では、保守要員がフロートの上を歩いて、太陽電池パネルの状態を目視で確認する必要がある。

 環境面の対策も欠かせない。エナジーバンクジャパンが笠岡市役所と締結した協定では、年に1回の頻度で水質検査を実施して結果を報告することが義務づけられている。「これまでに実施した検査では、池の水質に問題は生じてない」(笠岡市役所 市民生活部 環境課 環境保全係長の前原成紀氏)。

 むしろ以前に市民からクレームが出ていた池の悪臭を抑える効果が期待できる。池の底にたまっているヘドロや水中の微生物が太陽光で化学反応を起こして、悪臭を発生していた可能性がある。「発電所を建設して以降、市民からクレームが来なくなった。水上を発電設備で覆ったことによって、池の中まで太陽光が届きにくくなり、悪臭が収まったと考えている」(前原氏)。

 池の水上を利用した太陽光発電には陸上にないメリットと課題がある。笠岡市の遊水池で実施中の太陽光発電事業の経緯、建設時の状況や発電設備の詳細、さらに環境対策を含めて、現地の状況をレポートにまとめた。

レポート全文 自然エネルギー活用レポート No.3
水上に太陽電池パネル3700枚が浮かぶ池
―岡山県・笠岡市でフロート式の太陽光発電所― (2.1MB)

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