ダムに5万枚の太陽光パネルを浮かべて発電千葉県・市原市に日本最大の水上メガソーラー

石田雅也 自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー

2019年3月15日

 平坦で広い空き地が少ない日本では、ダムの水面も太陽光発電に適した場所になる。東京湾に近い千葉県の丘陵にあるダムを利用して、「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」が2018年3月から運転を続けている(写真1)。合計で5万枚を超える太陽光パネルを水面に浮かべて、発電能力は13.7MW(メガワット)に達する。水上の太陽光発電設備としては日本最大である。
 
写真1 上空から見た「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」の全景
出典:京セラTCLソーラー

太陽光パネルをフロートに搭載、約500本のアンカーで支える

 水上メガソーラーを建設した山倉ダムは、東京湾岸の工業地帯に水を供給するために1963年(昭和38年)に造られた。水面の面積は約60ヘクタール(0.6平方キロメートル)あり、そのうちの30%を太陽光発電に利用している。水面に浮かべる太陽光パネルは軽量のフロートの上に搭載する。さらにフロートを前後左右に連結して、5万枚の太陽光パネルを組み合わせる(写真2)。

写真2 太陽光パネルの設置状態(上)、水上に設置する太陽光パネルとフロート(下)
出典(右下の図):シエル・テール・ジャパン

 しかし、これだけでは水面に浮かぶフロートが風や波で流されてしまう。フロートの周囲からワイヤーが水中に延びていて、先端部分はアンカーが湖底に打ち込まれている。「マンタレイ・アースアンカー」と呼ぶ五角形の構造物である(図1)。5万枚の太陽光パネルを搭載したフロートを固定するために、約500本のアンカーを打ち込んだ。

図1 アンカーの設置状況(上)、アンカーの実物(下)
出典(上の図):京セラTCLソーラー(設置イメージの画像はMacLean Civil Products)

 アンカーの設置はダイバーが潜水して作業する。太陽光パネルとフロートは陸上で組み上げてから台船で運ぶ。アンカーの設置に3カ月、その後に太陽光パネルとフロートの設置に9カ月かかった。その代わりに陸上と違って土地を平らに造成する必要がなく、建設費は陸上のメガソーラーと同程度で済む。
 
 最も難航したのは、送電線の接続工事である。約1キロメートル先の送電線まで電力を送るには、新たに鉄塔を建設する工事が必要になった。電力会社から求められた工事費は想定をはるかに上回るものだった。追加で発生する多額の費用をカバーするために、さまざまなコストを削減して、着工から2年後に運転開始にこぎつけた。
 
 日本最大の水上メガソーラーが完成するまでの過程を振り返りながら、水上に建設した太陽光発電設備の構造、安全性や環境対策を含めてレポートにまとめた。

 

外部リンク

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